早稲田大学スポーツビジネス研究所(略称RISB)という耳慣れない組織がある。 大学の知的財産センター内のいわゆる学内ベンチャーだが、スポーツ産業に関する調査・研究や委託研究などが主たる事業である。 今月24日(土)、大学国際会議場で同所主催『スポーツクラブ・ビジネス・セミナー』が開かれる。 国が推進中の総合型地域スポーツクラブの育成・運営をビジネスという視点で捉え、そのためのキーワードを示し、研究員(大学の教授陣)がレクチャーすると同時に、参加者に演習してもらうプログラムである。 さらに、NPO法人日本ランナーズクラブを立ち上げた金哲彦氏(競走部OB)が事例紹介を行う。 早稲田大学はスポーツ教育・研究の拠点としてスポーツ科学部を所沢市におき、国・県の補助事業であるクラブ立ち上げを全面支援し、育成途中である。 また、埼玉県スポーツ振興基本計画策定にも加わり、県広域スポーツセンター事業の業務委託を研究所が受けていて、ノウハウが集積中である。 さて、今回のテーマとなる、何となく堅苦しいイメージの総合型地域スポーツクラブであるが、平成7年度より試験的にスタートし、13年度からは新しいスポーツ振興基本計画の中核事業として推進されているが、育成状況などが社会の関心を集めたり、話題に上ったりすることが少なく、その姿がなかなか見えて来ない。 それは、国の施策であるが故に、現実化するまでのリード・タイムが長いこと、公共土木事業などと違い規模が小さく、形にならないので注目度が低い、未曾有のデフレ経済下、スポーツは後回し等、いくつかの理由が挙げられる。 しかし、何よりも、スポーツ振興基本計画そのものへの国民の関心度、注目度が極めて低いことが一番大きな理由である。 スポーツはテレビで見るものであり、競技、健康、社交などの目的で自身がスポーツに参加することは、まだまだ生活の一部となっていないのである。 この基本計画は、『できる限り早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が2人に1人(50%)になることを目指す』(平成13年4月文部科学省)と定めている。(平成12年度内閣府調査では37.2%) そのためにクラブの全国展開に向けた施策として、全市町村に少なくとも一つのクラブ、都道府県に一つの広域センター育成を目指している。 最新の情報では広域は18、クラブは236(準備中305)(14年7月現在文部科学省調べ)が活動している。数字から見る限りでは、計画が2年経過した時点としてはまずまずのペースである(実際は7年度からの累計である)。 基本計画が都道府県に通達された当初は、クラブ育成のイロハから勉強するといった状況であったが、最近では設立・育成・運営のための実務段階に移行しており、関係団体による研修やセミナー、先進事例視察も活発化している。その意味からは基本計画が着実に浸透していることがうかがえる。 問題は行政主導で立ち上げ、指導・育成をしないと計画が推進されないことである。長い間、行政が準備した施設、予算つまり税金で賄ってきたスポーツ活動を受益者負担、地域主導、多種目、多世代型のクラブ組織に頭を切り替えることは、相当な意識改革であり膨大なエネルギーが必要である。 既存の習慣、認識を変えさせる啓発活動が急務であるが、行政の限られた予算ではキャンペーンが展開できない内情もあり、関係者はやきもきしている様子である。 そのような状況を打破すべく、研究所は行政の支援を受けつつ地域主導でクラブ設立・育成の流れを作りたいと目論んでおり、今まで蓄積した事例の発表と参加者による意見交換などを行うという。 一ベンチャーのチャレンジがどこまで流れを変えるきっかけになるか? 過大な期待は禁物だが、新しい試みに注目したい。 ■詳しくはこちら
http://www.waseda.ac.jp/projects/risb/risbland2003.htm |