「パブリック・ビューイング(PV)」。昨年のワールドカップで注目された企画(催し)である。
大型スクリーンの前に、多くの人が集まり声援を送る。 年輩の人は、テレビ草創期の「力道山の街頭テレビ」を思い出したものだ。
98年のワールドカップ・フランス大会の時、繁華街の広告用スクリーンの前に、続々と、日本代表のレプリカを着た人達が詰めかけ、こういう「スポーツの楽しみかた」が生まれてきたのか、と驚かされた。その時には「PV」の呼びかたはまだ無い。
昨年、一気に話題を集めたのは「PV」が有料で、興行となる点だった。 東京・国立競技場で開かれた日本戦のそれは、約40000人の入場があった、と主催者は発表した。
「PV」には、抜け目なくエージェントによって権利が設定されている。 国立競技場以外での「PV」は、ワールドカップ開催都市で無料に限られ、会場は1000人以下だの、開催回数に条件が付けられるなど、許可がおりるまでにも時間がかかった。この規制が、なんの権利を保護するためのものか、私には、分かりにくかった。有料PV権か、テレビ放送権か?
「PV」が興行面で興味をもたれ、その後、スポーツや音楽などで企画する動きが伝わったが、具体化せず、ワールドカップ級の超大型イベントでなければ難しいのか、と思われた。そうなると日本は“品不足”だ。
それが突然のように、8月末、埼玉スタジアム2002で、セ・リーグ阪神―巨人戦(甲子園球場)の「PV」が行なわれるという。 日本経済新聞7月29日付(首都圏経済面)によれば、希望者は1人1000円で入場できる。
“阪神人気”にあやかっていささか下火の「プロ野球再興プラン」かと思ったが、スタジアム収入増を狙ったけなげな発想らしい。 ワールドクラスのサッカー専用スタジアムと華々しくデビューしたものの、サッカーだけでは管理コストをまかなえず、タイガースのパワーにすがることになったものだ。
球団側の協力やテレビ放送権など取り巻く制約とどのような折り合いがついたかは詳らかではないが、企画はともかく、早々と「ワールドカップサッカースタディアム」がこうした苦肉の策に踏み切らざるを得ない“経営事情”は、前途の険しさを感じさせる。
それみたことか、と識者と呼ばれる人たちの声が聞こえてきそうだが、ネーミングライツ(命名権)を含めたスポーツ施設経営、「PV」、「クローズドサーキット」などスポーツマーケティングに新展開を促すのなら、この六甲おろし、いい風ととらえたい―。 |