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下った「プレミア」の放送権料
(杉山 茂/スポーツプロデューサー) | デビッド・ベッカムが居なくなったからでもあるまいが、イギリスのプロサッカー「イングランド・プレミアリーグ」のテレビ放送権料(イギリス国内でのライブ)がその額を下げた。
2001年〜02年シーズンから03〜04年シーズンまで3年間11億1000万ポンドが、04〜05年シーズンから3年間10億2400万ポンド(1ポンド=約194円)で収ったのである。
オリンピック、アメリカンプロスポーツ、サッカー、どれをとっても、前契約料を上廻るのが常識、とされているなかで、これはビッグニュース、と云ってもいい。
「プレミアリーグ」の放送権料は、1992年から衛星有料チャンネル、ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング社(BスカイB)によって、驚異的な巨額が積みあげつづけられ、それが、ヨーロッパ・サッカー界全般の空前の好況を誘った。
国境を問わないスーパースターたちの高額移籍は、各国の衛星有料チャンネルがもたらせたバブルである。 いつかはじける、の声をよそに、ワールドカップ(02年、06年)までも巻きこんで、勢いは、いっこうに衰えを見せずにふくらんできた。
それが、旋風の目となった「プレミアリーグ」で、8600万ポンド=166億8400万円も下った。12億ポンドラインを越えるのでは、とささやかれていたのだから、話題性はさらに高まる。これで、総ての放送権料が鎮静化するのでは、といった“観測”が飛ぶのもムリはない。
これよりさき、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)は、人気絶頂の「UEFAチャンピオンズリーグ」のテレビ放送権を、これまで1ヶ国・1放送業者に限っていた販売方式を放送権の分割で、複数のテレビ局で放送ができるように改善していた。
「プレミアリーグ」も、新しい販売方式を検討し、04〜05シーズンからは土、日、月曜の試合の放送権を、それぞれ“分割”、1局支配の排除を狙ったが、結局は、BスカイBが、総て買い上げた。
他局が検討する間もなくBスカイBが一括してしまった感じもするが、1つの曜日だけでも他局に割り込まれた場合、加入者の解約という不安があったのだろう。
それでも権料が下った理由に関する情報はいまのところ持ち合せぬが、案外、曜日分割のアイディアがプレミアリーグにとっては裏目になってしまったのかもしれない。
日本国内では、スペインリーグの放送権争いがどうやら落ちついた模様だが、このあと来シーズン以降のメジャーリーグ、2006年のワールドカップ、10年(冬季・バンクーバー)と12年のオリンピックなど“熱いテレビビジネス”がつづく。どれも値下げでまとまる気配はない−。
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ガンを克服して戦う中島恵利華を見たい
(早瀬 利之/作家) | 中島恵利華が日本女子オープン地区予選に出場して話題を呼んだ。すでに38歳と、女子プロ界では老令になるが、それでも挑戦する姿がうれしかった。
中島家はゴルフ英才教育一家で、3人ともスパルタ式で育った。彼女も父親に一発平手打ちをくらった、と兄の常幸が語ったことがあるが、その一発が彼女を女子プロの世界に向かわせている。
すでに恵利華は2児のママ・ゴルファー。ふと不幸な運命をたどった、男運に恵まれなかったローラー・ボーを思い出したが、幸いなことに恵利華の場合は主人に恵まれた。一家そろって恵利華の応援に回っている。
今回は初出場で予選落ちはしたが、今後、他のスポンサートーナメントの主催者側は、彼女を推せん出場させると良い。2児の母親のカムバックは厳しいものがあるが、例え予選落ちしようとも、戦う母親の姿を、広く見せて欲しいと思う。
子供だらけの女子プロゴルフ界では人気は出ない。テレビ中継を見ようとも思わない私だが、人生の辛酸をなめてきた、しかもガンを克服してのカムバックの姿は、勝敗を越えた感動がある。
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「食べること」へのこだわり
(岡崎 満義/ジャーナリスト) | 朝日新聞の8月12日付朝刊に「アテネ五輪まで1年」という座談会がのった。出席者は3人の日本代表監督。野球の長嶋茂雄さん、シンクロの井村雅代さん、ソフトボールの宇津木妙子さんが、金メダルへの熱い思いを語っている。
座談会の最後に「アテネの舞台で、監督にできることは何でしょう」と訊かれたときの三人三様の反応が、何ともいえず面白かった。 まず長嶋さんが「本番には日本食の結構力のあるシェフを3人連れていきます。過保護かもしれない。JOCからも、そういう声が聞こえてきます。でも、最後はできるだけのことをしてあげたいという気持ちになるんですよ。選手というのは、和食を食べると癒されるんですよ」と、やさしい長嶋流を披露した。
すると井村さんは「私ら、食べるものの内容は全然気にしませんけどね。シンクロでは、食べることは体重を落とさないため。エネルギーだから。あれが食べたいとか、そんなことはどうでもいい。だから、どんな食べ物でも耐えていけます。‥‥レストランに行く。出てくるものは絶対食べ物や、と。変なものは出てこない。変なものであっても、食べ物や、と」。
宇津木さんも「女は強いんですよ。私は選手に『体重が減ったら試合で使わない』と言うんですが、選手は必ず調整して上げてきますよ」と発言している。
長嶋さんはいささかタジタジの態で「それは男の子たちの方が弱い。からっきしダメ。女性には勝てないですね」と、あっさり降参している。
文面で見るかぎり、根性とか、ハングリー精神とか、そんなものは男の世界から女の世界に引っ越した感じである。 しかし、長嶋さんと同年生まれの私は、長嶋さんの気持ちが少し分かるような気がする。
アテネ五輪が開かれるのは、8月11日〜29日。暑い夏である。8月といえば、暑い夏、敗戦、それにつづく飢餓状況である。昭和20年に小学校(当時は国民学校)3年生だった私は、そのあと昭和22年頃まで、随分ひもじい思いをした。長嶋さんも同じだろう。
人間、胃袋のことが一番、(頭のことは二の次!?)というのが、私たちの世代の基本的な共通認識である。ひとまわり上の世代の故・司馬遼太郎さんからも「人間、うまいもの(キチンと手をかけた料理。値段の張るグルメ料理ではない)を食っていないと、性格が曲がるんだよ」と、聞いたことがある。
生まれた年を見ると、井村さんは1950年、宇津木さんは1953年、お二人がもの心ついたときは、少なくとも日本社会から飢餓は消えており、飽食社会が近づいていた。うまいものを食べることはあたり前の時代になっていた。食べ物に対するこだわりは、殆どないようだ。
世代の差がクッキリと出た3人の発言だ、と思った。 | PageTop
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