テレビ朝日系で1959年初場所から43年間にわたって編成されてきた「大相撲ダイジェスト」が、秋場所千秋楽(9月21日)の放送で終了となった。
打ち切りは、今春すでに発表されており、復活の要請や他局との折衝の動きもあったとされるが、好転するだけのパワーは無く、予定どおりの路線でしめくくられた。
“長寿”を誇った正統派のスポーツ番組が姿を消すのは寂しい。 ウィークデー午後の興行が多い大相撲は「誰が見るのか、見られるのか」と指摘されつづけているが、その“欠点”を補ったのが、この番組だ。
ナマの緊迫感には欠けるものの、中入り後の全取組みをスピーディーにまとめ就寝前のスポーツ情報番組として「プロ野球ニュース」(フジ系、この番組もCSに移ってしまったが‥)と並ぶヒット企画であった。
終えんの背景は、大相撲の人気下降だ。関心の集まる取組みの数も少なくなり、各局のニュース番組での“小さな扱い”で、充分コト足りるようになってしまった。家庭用ビデオの普及も一因、とされるが、大相撲そのものへの魅力が乏しくなったとあれば、番組は成り立たない。視聴率と放送権料を含めた制作費のアンバランスも難関となる。
いく度となく低迷の時期を乗り切り、爆発的な盛況へと立ち直る大相撲特有の“伝統の力”も、衰えを否めない。 人気のかげりのたびに、テレビの制作面のマンネリズムが問われてきたのも事実だ。
中継カメラの台数が増え、角度(視角)も多様となり、ビデオテープによる再生のシーンも多彩となったが、勝負を競っている時間が、あまりにも短く、展開中のカメラワークは、どうしても画一的になる。
秋場所大詰め5日間97番の所用時間は、10秒かからぬ取組みが66番、そのうち36番が5秒以内で結着している(注・所用時間は日刊スポーツ紙による)。
極めて短い時間に、味の濃さが詰め込まれたスポーツは、テレビ的には単純な直線を引いているに等しい。 人気力士が次々と土俵へ上がれば、立ち合うまでの時間も、5秒の勝負も、苦にはならない。それが「人気」というものでもあろう。多カメラ、多角度も、本体の魅力があってこそ活きる。
オールドタイマーにとって「大相撲ダイジェスト」は、テレビのない時代、映画館にかけられた「本場所好取組」の雰囲気を引き継ぐものでもあった。
この番組の引退取り消しは、期待できないのだろうか−。 |