Home
 
オリジナルコラムを中心とした当サイトの更新情報、スポーツ関連講座やシンポジウム開催情報などを無料配信しております。今すぐご登録を!
メール配信先の変更
ご意見・ご要望

最新号

■Back Number■

Vol.164( 9/17)
Vol.163( 9/10)
Vol.162( 9/ 3)
Vol.161( 8/27)
Vol.160( 8/20)
Vol.159( 8/13)
Vol.158( 8/ 6)
Vol.157( 7/30)
Vol.156( 7/23)
Vol.155( 7/16)
Vol.154( 7/ 9)
Vol.153( 7/ 2)
Vol.152( 6/25)
Vol.151( 6/18)
Vol.150( 6/11)
Vol.149( 6/ 4)
Vol.148( 5/28)
Vol.147( 5/21)
Vol.146( 5/14)
Vol.145( 5/ 7)
Vol.144( 4/30)
Vol.143( 4/23)
Vol.142( 4/16)
Vol.141( 4/ 9)
Vol.140( 4/ 2)
Vol.139( 3/26)
Vol.138( 3/19)
Vol.137( 3/12)
Vol.136( 3/ 5)
Vol.135( 2/26)
Vol.134( 2/19)
Vol.133( 2/12)
Vol.132( 2/ 5)
Vol.131( 1/29)
Vol.130( 1/22)
Vol.129( 1/15)
Vol.128( 1/ 8)
Vol.127(12/25)
Vol.126(12/18)
Vol.125(12/11)
Vol.124(12/ 4)
Vol.123(11/27)
Vol.122(11/20)
Vol.121(11/13)
Vol.120(11/ 6)
Vol.119(10/30)
Vol.118(10/23)
Vol.117(10/16)
Vol.116(10/ 9)
Vol.115(10/ 2)
Vol.114( 9/25)
Vol.113( 9/18)
Vol.112( 9/11)
Vol.111( 9/ 5)
Vol.110( 8/28)
Vol.109( 8/22)
Vol.108( 8/14)
Vol.107( 8/ 7)
Vol.106( 7/31)
Vol.105( 7/24)
Vol.104( 7/17)
Vol.103( 7/10)
Vol.102( 7/ 3)
Vol.101( 6/26)
Vol.100( 6/19)

100号記念メッセージ
150号記念メッセージ

■vol.165(2003年9月24日発行)

【杉山 茂】 打ち切られた「大相撲ダイジェスト」
【松原 明】 「アメリカ女子プロサッカーの消滅」  
【早瀬利之】 ANAオープン、葉偉志プロのサングラスはまるで「台湾ヤクザ」
 
【岡崎満義】 小川洋子『博士の愛した数式』が面白い!


打ち切られた「大相撲ダイジェスト」
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

テレビ朝日系で1959年初場所から43年間にわたって編成されてきた「大相撲ダイジェスト」が、秋場所千秋楽(9月21日)の放送で終了となった。

打ち切りは、今春すでに発表されており、復活の要請や他局との折衝の動きもあったとされるが、好転するだけのパワーは無く、予定どおりの路線でしめくくられた。

“長寿”を誇った正統派のスポーツ番組が姿を消すのは寂しい。

ウィークデー午後の興行が多い大相撲は「誰が見るのか、見られるのか」と指摘されつづけているが、その“欠点”を補ったのが、この番組だ。

ナマの緊迫感には欠けるものの、中入り後の全取組みをスピーディーにまとめ就寝前のスポーツ情報番組として「プロ野球ニュース」(フジ系、この番組もCSに移ってしまったが‥)と並ぶヒット企画であった。

終えんの背景は、大相撲の人気下降だ。関心の集まる取組みの数も少なくなり、各局のニュース番組での“小さな扱い”で、充分コト足りるようになってしまった。家庭用ビデオの普及も一因、とされるが、大相撲そのものへの魅力が乏しくなったとあれば、番組は成り立たない。視聴率と放送権料を含めた制作費のアンバランスも難関となる。

いく度となく低迷の時期を乗り切り、爆発的な盛況へと立ち直る大相撲特有の“伝統の力”も、衰えを否めない。

人気のかげりのたびに、テレビの制作面のマンネリズムが問われてきたのも事実だ。

中継カメラの台数が増え、角度(視角)も多様となり、ビデオテープによる再生のシーンも多彩となったが、勝負を競っている時間が、あまりにも短く、展開中のカメラワークは、どうしても画一的になる。

秋場所大詰め5日間97番の所用時間は、10秒かからぬ取組みが66番、そのうち36番が5秒以内で結着している(注・所用時間は日刊スポーツ紙による)。

極めて短い時間に、味の濃さが詰め込まれたスポーツは、テレビ的には単純な直線を引いているに等しい。

人気力士が次々と土俵へ上がれば、立ち合うまでの時間も、5秒の勝負も、苦にはならない。それが「人気」というものでもあろう。多カメラ、多角度も、本体の魅力があってこそ活きる。

オールドタイマーにとって「大相撲ダイジェスト」は、テレビのない時代、映画館にかけられた「本場所好取組」の雰囲気を引き継ぐものでもあった。

この番組の引退取り消しは、期待できないのだろうか−。

PageTop


「アメリカ女子プロサッカーの消滅」
(松原 明/東京中日スポーツ報道部)

WUSA[アメリカ女子サッカー・プロリーグ」は発足わずか3年目で消滅。9月15日に同リーグの理事会で決めたもので、観客の激減、入場料収入ダウン、テレビ視聴率がゼロに近い、などの悪条件が重なり、支援のケーブルテレビ会社が撤退を申し入れた。

9月20日から、アメリカで始まる「女子ワールドカップ」を目前にしての解散は関係者にショックを与えた。これで、アメリカ女子プロリーグで残るのはバスケットボールのWNBAだけになり、ソフトボールも、他のバスケットボール・リーグもすでに消えている。

女子プロサッカーの発足は1999年のアメリカ女子W杯で各地で満員の観衆を集めた成功がきっかけでスタートした。世界各地から有能なスターを集め、ドラフトで均等配分するユニークなチーム作りが注目を集めたが、年間開催のリーグはファンに受け入れられなかったようだ。

女子の育成に世界初のプロリーグへ各国は代表選手をアメリカへ送り出したが、消滅してしまえばもう舞台がない。発足1年目は平均8116人を集めたが、今季は6667人と大幅にダウン。選手の年俸も20%カットし、経費削減に努めたが、それも空しかった。

日本代表選手のMF沢もアトランタ所属で腕を磨いたが、中止に呆然とするばかり。沢を追ってプロ入りしたMF小林もビザが降りず、ついに一度も渡米してプレーすることなく閉幕の悲劇。

WNBAでもいつ解散するか分からないほどの苦しい経営だという。かって外国人スターを集めた日本のLリーグも、今は手弁当でアルバイトしながら細々と続けている。

「短期間の集中大会をやるしか道がないのが分かった」と、アメリカ関係者は来年以降の転換を模索している。

PageTop


ANAオープン、葉偉志プロのサングラスはまるで「台湾ヤクザ」
(早瀬 利之/作家)

今年も札幌郊外の輪厚コースで行われているANAオープン(全日空オープン)を観戦した。北海道は初秋で、ナナカマドが紅葉し、赤い実をつけていた。まさしくANAオープンは秋シーズンの開幕を告げる。

結果は台湾の新人プロ、葉偉志が、72ホールめの18番グリーンで10メートルの長いバーディーパットを沈めて、1打リードしたジャンボ尾崎を逆転した。ジャンボの18番第2打は、左足上がりの打ち上げホールで、右おくのピンをフェード系のボールで狙ったが、足のフットワークが止まり、そのまま、すっぽりと抜けて奥のラフに入れた。

ジャンボは56才。この頃のスウィングは、上半身を回さず、パンチショットをしている。これが飛ばない原因で、葉偉志に何度もアウトドライブされていた。米山よりも飛ばず、第2打はジャンボから打つシーンが多かった。年令からくる宿命であるが、年とるとフェードは辛い。それでも2連覇に燃えたことは高く評価する。

逆に評価できないプロが2人いた。谷口徹と葉偉志だ。サングラスをかけることは、ギャラリーや選手仲間に心を見せないことである。遠いところから観戦にくるお客に、心を見せずして、何を見せるというのか、お伺いしたい。

格好いいものではない。かつて台湾プロといえば、陳清波プロのように、マナーの良さと人格だった。今では台湾ヤクザまがいである。谷口も葉も、サングラスは品格を落とすため、ただちにやめるべきだ。

PageTop


小川洋子『博士の愛した数式』が面白い!
(岡崎 満義/ジャーナリスト)

阪神タイガース18年ぶりの優勝の年にふさわしい、面白い小説を読んだ。8月に出た小川洋子『博士が愛した数式』(新潮社)。小川さんは平成3年に『妊娠カレンダー』で第114回芥川賞を受賞した、今、脂の乗りきった作家である。受賞作も面白いものだったが、こんどの『博士が愛した数式』は、2倍も3倍ものめり込んで読むことになった。

それは、阪神の江夏豊が小説の重要なファクターとして出てくるからだ。主要な登場人物は3人。64歳の「博士」は17年前に交通事故で、脳に回復不能のダメージをうけ、記憶はその年(1975年)でストップ、現在のことは「頭の中に80分のビデオテープが1本しかセットできない状態」にあるという人。その博士のもとに、毎日家政婦として入っている私と、私の10歳の息子ルート(頭の形が平らなところから、博士がそう名付けた)。

博士は数学の天才で、初対面の「私」にいきなり「君の靴のサイズはいくつかね」と訊き、「24」というと「ほお、実に潔い数字だ。4の階乗だ」「1から4までの自然数を全部掛け合わせると24になる」と喜ぶような人だ。

この小説の中では、約数、素数、自然数、友愛数、完全数・・・・などという数学用語が数式とともにひんぱんに出てくるが、少しもうるさい感じはしない。ふしぎな感動を覚える小説だった。

博士は江夏豊の大ファンで、彼の野球カードを秘蔵するほどで、背番号28は完全数(28=1+2+4+7+14、つまり28の約数を足すと28になる)になるというのも、何やらふしぎな因縁。

小説はたて糸としての数式、よこ糸としての阪神・江夏豊の影が交錯する中に、3人の無私の愛が静かにひろがっていく、という感動的な小説だ。3人で阪神の試合を見に行って、飛んできたファウルボールを、博士が身を挺してルートを守るシーンもあって、この小説は子どもの成長に大人がどうかかわるか、という一種の教育小説として読んでも面白い。

それにしても、こんな小説の中に江夏の名前が出てくるのがうれしかった。

小説の最後はこんな一節で結ばれている。「背景は暗く、観客もスコアボードも闇に沈み、江夏ただ一人が光に浮かび上がっている。今まさに、左手を振り下ろした瞬間だ。右足はしっかりと土をつかみ、ひさしの奥の目は、キャッチャーミットに吸い込まれてゆくボールを見つめている。マウンドに漂う土煙の名残が、ボールの威力を物語っている。生涯で最も速い球を投げていた江夏だ。縦縞のユニフォームの肩越しに背番号が見える。完全数、28」

阪神ファン、とくに江夏ファンには、ぜひ読んでほしい小説である。

PageTop


本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。 →ご利用条件