このまま一気にアテネ・オリンピックの表彰台中央までかけ上がってしまうのではないかと思われた日本の女子レスリングが、思わぬつまずきをのぞかせた。
7ヶ国が参加して東京・代々木で開かれた第3回国別対抗戦・ワールドカップ(10月11、12日)は、9月の世界選手権(ニューヨーク)で圧倒的な強さを示し7階級のうち5階級を制した日本のV3が期待されながら、アメリカとの全勝対決を3−4で落としてしまったのである。
終ってみれば、アメリカは世界選手権で金メダルこそ1個だったが、銀4、銅2を手にしており悔れぬ相手、日本との実力は五分と見てよかった、といった声がマットサイドで聞こえた。
世界選手権の前、日本オリンピック委員会(JOC)の強化責任者でもある日本レスリング協会・福田富昭会長が「オリンピック競技に決まり、各国選手の目の色が変わってきた。ニューヨークで好成績を上げたとしてもアテネは油断できない」と話していたのを思い出した。ワールドカップのあと日本の関係者の1人は「日本勢は研究されつくしていた」とも語った。
日本スポーツ界は、これまでもチームスポーツ、個人スポーツを問わず、オリンピックイヤー以外の年に行われた世界選手権や国際大会で最上の成績をあげながら、本番ともいうべき大舞台で失敗するケースが少なくなかった。
外国選手(チーム)は、戦力の引き上げかたが総ての面で洗練されており、事前の実績にプラスアルファした程度の自信で臨む日本勢は苦い汁をのまされる。
アテネでの女子レスリングは4階級(48、55、66、72s級)。このうち世界選手権では48s級以外の3階級で日本が優勝している。アメリカなど各国にしてみれば、オリンピックも日本選手に“独走”されてはかなわない。自分たちが、それに代わるには、日本を徹底的にマークすることだ。照準はしぼり易い。
総当り戦のワールドカップで、アメリカを除いては各国とも、ベストメンバーの日本から1ポイント(1勝)をあげるのさえ苦労した。ロシアも0−7だ。だが、新種目だけに、残された時間で新星が飛び出してくる可能性は充分ある。
日本選手はホームでの敗退は悔しかろうが、それがオリンピックへの道のりの厳しさであり、険しさである。試練の惜敗といえる。 女子レスリングは、11月アメリカへ乗りこんで、アメリカ選手と合同強化キャンプを張る、という。これからの10ヶ月、各競技のオリンピックをめぐる浮き沈みは、いつのものように凄まじいうねりを見せることになる。楽しみではある―。
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