12月6日付け読売新聞『変わるスポーツ』4部提言に日本オリンピック委員会(JOC)竹田恆和会長のインタビューが掲載された。 注目されることは、高い競技水準を維持し、世界と競うためには現行の選手育成、強化システムの構造改革が必至であるとの考え方をトップ自ら初めて公表し、日本の競技力基盤を支えてきた企業スポーツ活動が機能を失いつつある現状をようやく認めたことである。 もう少し踏み込んで言えば、遅まきながら組織として現状認識したうえで、対策としてクラブ育成に注力することで国際競技力を維持、向上させたいという意思表明と推測出来る。 竹田会長はかつて馬術選手として活躍し、今日では国際競技連盟(IF)役員などの活動を通じて欧米のクラブが果たす役割と機能については深い認識と理解を持った、日本において最も国際スポーツ事情に精通した一人である。 発言の中で「スポーツを支える組織として欧州型スポーツクラブを育成する必要があるが、すぐには移行できない面もあるので今は過渡期である。移行するためには当面企業に社会貢献の一環として支援してもらうことが重要である」と述べている。 企業スポーツの縮小や撤退はここ2〜3年の現象ではなく、すでに10年程前から顕著に現れていて問題視されていたのだが、抜本的な対策は打ち出されていなかった。 スポーツを所管する文部科学省は昨年度『企業スポーツに関する調査研究有識者会議』なるものを設置して調査・検討を行い、『ニッポン』の未来を支える企業とスポーツのパートナーシップを求めて、と題する提言を行った。 この会議には当事者であるJOCも当然ながら参加しているが、今までにないスポーツを支えてきた企業の代表や選手代表も加わって多面的な意見交換がなされた。 そこで、日本スポーツ界のトップである竹田会長の意思表明によって、加盟団体がクラブ育成に注力することを期待したいのだが、その多くは権威主義、縦社会、マネージメント機能不全に陥っている現状にあり、相当の指導力や支援を継続しない限りお題目に終わる懸念が大きいと言わざるを得ない。 豊富な財政を持つJOCには、目的達成の為にクラブ育成事業を大きな柱にして加盟団体を引っ張り支援することを期待したい。 そして、何よりも分裂した日本体育協会と垣根を取り払い、新しい発想でプロジェクトを組むような柔軟な姿勢を迅速に打ち出して欲しいものである。 |