いよいよアテネ五輪の年を迎えた。 晴れて代表の座を獲得する為に、緻密な目標を立て4年間を消化していく選手、コーチは高まる騒ぎをよそにひたすら調整に明け暮れる。
一日たりとも疎かに出来ないのである。 各競技の代表選考レースも熱を帯び報道はここぞとばかりヒート・アップする。 夏冬それぞれ4年毎に巡り来る大会なのに何故これほどまでに報道が過熱し、大騒ぎするのだろうか?
過熱する取材合戦、報道は選手やコーチ、関係者にはむしろ迷惑な面もあるようだ。 よく考えれば当然のことであるが選手は自分のペース、計画を冷静に着実に実行することが第一であろう。その先に代表の座が待っており、メダルへの道が開かれる。
目標達成の為には取材・報道に余計な神経を使いたくないのが本音だ。 さて、新年早々、JOC専務理事談として不思議な報道がされた。 『出場権を獲得した野球の長嶋茂雄全日本監督(JOCエグゼクティブ・アドバイザー)が開会式の際、団の先頭、然るべき場所で入場行進することを歓迎したい、本人も前向きに考えてくれているので是非とも実現したい。』
勿論JOCスポンサーである読売の報道である。 そして同紙1月1日朝刊五輪特集ページで井上康生選手(柔道)との対談では『機会があれば行進したい』自身がと述べている。
国民的ヒーローでもある長島全日本監督が行進することに異議を唱えるつもりは無い。 国民の共感を呼び五輪への関心を高める為には意義深い計画であろう。 しかし穿った見方という批判を恐れず敢えて述べる。
読売は一貫してプロ野球選手の五輪参加を強く否定し、特に巨人の選手は出さないとトップ自ら公言し話題を提供していたではないか? しかし、その後急にトーン・ダウンしたと思ったら読売新聞は何とオリンピック・キャンペーンのスポンサーとして名乗りを上げJOCのスポンサー活動に熱心だ。
更に野球では巨人の選手が中心の選手編成になるであろうことも十分考えられるのだ。 其処へ来て今度は長嶋監督の入場行進だ。 この一連の動き、流れを読者は何と解釈するであろうか?
日本を代表するいや世界の言論,報道のリーダーを自認するクオリティ・ペーパーが自社の利益のためにシナリオを書き上げ着々と布石を打つという見方が成り立つ。 今年一年、これらの豊富な材料を使いあらゆる報道、広報展開が予想される。
他紙を圧倒する目論見が見え見えだ。 公正で客観的報道を標榜する大新聞がスポーツ紙,夕刊紙と同じように読者を煽るような見出しや記事で勝負するようなことはよもや無いと思うが読者はどのように思われるだろうか? 五輪は商業主義の弊害があらゆる所に露呈し、もはや理念、精神は空文化しているのが実情だ。
何度も述べているが主役は選手という原点を改めて認識し選手の活躍を支援するのがスポンサーであることを強く訴えたい。 |