プロ野球界に「大リーグ風」が吹き始めた。正確には「アメリカ風」というべきだが、新規加盟の審査を受けているライブドアはオマリー監督を予定し、楽天はキーナート氏(監督は田尾安志)をGMに据えると発表している。オマリー監督が実現すれば日本ハムのヒルマン、ロッテのバレンタイン両監督と合わせてパ・リーグは半分の監督が外国人になる。
そこで「外国人指導チーム」の功罪をみてみたい。 最初にことし北海道で旋風を巻き起こした日本ハムのヒルマン監督について、担当記者に聞く。
「いい面は、選手を束縛しないこと。かなり広範囲にコーチに任せるから、練習には日本的なトックンもあるが、シーズンにはいると自分のカラーを出して、たとえば、たとえ負けていても休日はきっちり休ませる。休むのも練習だ、といっている。おかげで選手はのびのびしている」 「よくない面は、とにかく思いっきりバットを振るとご機嫌なことだ。打撃コーチがデンボというヤンキースにいたコーチのせいもあるが、みんな小笠原のようなフルスイングばっかりで、凡フライが非常に多い。新庄には合っていたようだが、前年打撃10傑の上位にいた金子なんかビリの30位に落ちた。機動力はリーグで最も下手で盗塁数は最下位。また、白井ヘッドにスタートオーダーをつくらせっきりで、一部には『白井ハム』などという陰口も出ていた」 ロッテと激しく3位を争ってプレーオフに進出できたのは、自由闊達な空気の賜であったかもしれないが、たしかに日本ハムの試合は大味だった。 ロッテのバレンタイン監督はどうか。担当記者に語ってもらう。
「とにかく明るい。サヨナラ劇などがあると真っ先にベンチを飛び出してワーワーやっている。見ていてこちらもうれしくなってくる。また、映画俳優みたいな顔で、負けたあともたんたんと記者会見に応じてくれる。もっとも中身はあんまりないがね」 よくない面は、「ヒルマン監督と同じでフルスイングを奨励しすぎるようだ。打撃コーチのロブソンは南海でプレーしたことがありロッテには2度目のコーチだが、なにをやっているのかわからない存在。あの小柄な小坂までバットを長く持ってブンブン。それで打てなきゃ使わないということらしい。おかげで小坂のよさが完全に消えてしまった。盗塁数はリーグ5位、2年連続チーム打率リーグ最下位は当然だろう」 2人とも「バットブンブン」の大味である。これが「アメリカ式」といっていいかもしれない。また投手の面で際だった成績上昇はみられない。 しかし両外国人監督がことしの最大の「功」は、観客動員に現れている。プレーオフ進出をかけて熱戦を展開した制度上の要因もあったが、ともに大動員に成功している。 日本ハムは北海道移転1年目の意気込みに乗って161万人、前年対比22.5%アップ。SHINJOの力を十分に引き出した成果といっていいだろう。日本人監督であったなら「キザっぽい」とか「おちゃらけている」などといいかねなかった。 ロッテはもっと凄かった。159万人の動員だったが、これは前年より30.3%増の球団新記録。これといった選手がいないのだから「バレンタイン効果」といっていいだろう。 この両球団の観客数はセ・リーグのヤクルト、横浜とだいたい同じもので広島より多い。いや、広島はパで最少だった近鉄の133万人より少ない98万人で、12球団最下位。ちなみにセの総計はマイナス1.8%の1377万人、パは5.3%アップの1068万人。パは、合併やプレーオフの実施などがあっての数字ではあるが、外国人監督の成功も入れていいかもしれない。 さて、オマリー監督である。日本で長くプレーし、阪神で打撃アドバイザーをしているから日本打者向けの打撃を知り尽くしているだろうが、地味だ。バレンタインのような集客力は持っていない。
キーナートGMの手腕は、グラウンドを取り巻く環境をどのようにしてお客さんを集めるか、にかかっているようだ。 いずれにせよ、ITとともに迎える新プロ野球時代が活況のあるものになってほしい。ぜひ、十分に腕を振るってもらいたい。 |