2006年ドイツで開かれるワールドカップの国内テレビ放送権が動いた。
民放とNHKで構成する「ジャパンコンソーシアム」(JC)が、日本での放送権販売の権利を受けている広告代理店・電通との間に契約の合意をみたのだ。電通は、4年前に2002年(日韓大会)と06年の2大会分を、当時はまだ元気だったスイスのエージェント「ISL」から得ていた。
「ISL」は消滅してしまったが、放送権は電通の手中にあったのである。
JC側は、正式な発表を行っていないが(=4月6日現在)、民放、NHKの地上波で合わせて40試合(=推定)、同BS(衛星)波で全64試合というのが合意内容のようだ。すでに一部のメディアも報じている。
地上波40試合は、02年大会と同じで、お茶の間スタンドは、とりあえず安心できる数字が確保された、といってよい。
放送権料は推測の域だが「140億円に近い130億円台」だろう。前回、JCの契約額は約70億円で、それから考えればほぼ倍増ということになる。
それには理由がある。前回、全試合独占を打ち出し100億円を越す放送権料を支払ったスカイパーフェクTVが、今回は積極的な参戦の意思がなく、JCだけがターゲットだった。
JCは競争相手がない状態で、しばらく様子を見るかと思えたが、意外にも早い段階での決着となった。NHKがハイビジョンの好ソフトとして高評価した背景が大きい、といわれる。地上波40試合は、前回なみに、民放・NHK折半だろうが、日本代表の予選突破がカギになるのは云うまでもない。
予選リーグの日本戦の振り分けは前回と同じ民放2、NHK1で落ち着くだろうか。民放側のある関係者は3―0を目指すと笑い、NHKに近い筋は今回は2―1と力んだ。この“争い”は当分、お預けになる。
さて、気になるのは、前回、あれほど張り切ったスカイパーフェクTVの姿勢だ。
私は、昨年秋あたりから同局が06年には消極的、と聞いていたが、02年が失敗だったわけではない。もともと、ワールドカップを見るための料金は設定しない大盤ぶる舞いで、局としての知名度、イメージアップが目的の“事業”だった。
会社(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)自体の経営が、安定を見通せるようになった現状で、巨額の支出をともなうワールドカップに乗り出す“冒険”を今回はあえてする必要もない、といったところだ。全試合録画での権利取得が目指す線か。
同社周辺のある人は「350万人の加入者をどうしても400万、450万人にと考えるなら手を出すでしょうが、今は、そこまでの新規加入者の増加に焦っていない」と話す。
アメリカ大リーグ、ヨーロッパのサッカーリーグへ経費を傾けるなど、この会社の狙いが定まってきたとも受け取れる。
有料契約独占のコンテンツとしては、ワールドカップはかえって大きすぎる。
それよりも、例えば「巨人戦以外のプロ野球…」といった加入の期待数を読める玄人(くろうと)やマニアを握るのが得策なのだ。日本における「ペイ・チャンネル」の難しさでもあろう。
ところで、JCの金額。間もなく始まるといわれる10年冬季バンクーバー、12年夏季(開催都市は来年決定)のオリンピック放送権交渉に影響は避けられなさそうである―。 |