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vol.194(2004年3月31日発行)

【杉山 茂】女子ハンドボールリーグに描かれた明暗
【早瀬利之】開幕戦からは毎週トーナメントスケジュールを
【松原 明】ジーコ日本代表の危機
【佐藤次郎】センバツの爽やかな風

vol.193 2004年3月24日号「国際オリンピック委員会・・・
vol.192 2004年3月17日号「アテネオリンピック、マラソン代表・・・」
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女子ハンドボールリーグに描かれた明暗
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 日本ハンドボールリーグ女子で、2つのチームが、対照的なシーズンの終わりかたをした(3月21日)。

 どこまでも陽気にしめくくったのはクラブチームの広島メイプルレッズ。同リーグで3連覇を遂げたばかりか、今シーズンは、すでに全日本実業団選手権、静岡国体、全日本総合選手権の3大タイトルを握っていた。完勝である。

 一方、山梨の強豪実業団として名をはせてきたシャトレーゼが、この大会を最後に、20年にわたるチームの歴史を閉じた。廃部の理由を、チーム関係者は「会社の判断」というだけで多くを語らない。新しい視点でのスポーツ支援活動が図られるため、ともいわれ、不況による撤退とは異なる。

 企業が、バックアップするスポーツに厳しい目を向け、さまざまな評価を求める時代が、とうに来ていた。シャトレーゼが、というわけではないが、スポーツ側に、このあたりの感覚が、乏しくはないか。

 峠を越した、ともいわれる企業スポーツの撤退や縮小だが、実態は、けして甘いものではない。ほとんどの日本リーグ関係者が、来シーズンもこのままのチームで行える保証は1つもないと表情を固くする。ハンドボールに限らず不安な動きは相変わらず絶えていないのだ。

 広島メイプルレッズは、3年前まではイズミと名乗る実業団だった。選手はその社員、今なお快進撃の主軸として活躍する韓国代表のオリンピック金メダリストを中心に、球界をリードしていた。

 それを、企業依存の体質では、将来を見通せないと、イズミを柱に、複数の企業の協賛を得て“クラブ化”に踏み切ったものである。

 当初は戸惑っていた選手も「クラブの姿」を見つけ出すようになる。限られた練習時間が緊張を呼び、仕事をしながら各大会、各試合へのモチベーションを上げる術を得てきたのだ。

 企業に背を向けられる前に、次の手を打ちしかも競技力を向上させることに成功したまれな例かもしれない。

 シャトレーゼは、地域密着型のクラブとして日本リーグ残留を目指したが、どうやら、それも難しい。

 山梨国体(87年)に向けて設立され、「会社の熱意」で、ここまで来たが、その間に、地域チームへの工夫ができなかったものか。

 実業団の灯が消えるたびに、惜別の気持ちより、日本のスポーツ界にただよう無力感と空しさだけが、いつものように胸に刺さる―。

開幕戦からは毎週トーナメントスケジュールを
(早瀬 利之/作家)

 男女とも開幕戦が始まった、と思ったら、1ヵ月間休戦である。女子ツアーは3月上旬の開幕戦後の第2戦は4月10日から。男子は3月下旬の開幕戦のあと、4月22日から第2戦が行われる。女子は1ヵ月と8日後、男子は30日後である。長いブランクが続く。

 その間、女子は5週間、男子は4週間のブランクの休戦状態。せっかくコンディションを整えたかと思ったら、ひと休みならぬ長期休暇の状態。

 日本の選手が、4月中旬のマスターズで優勝できないのは、1月から3月一杯で一試合しかないことがネックだ、と言ったのはジャンボ尾崎だった。試合開始がアメリカやヨーロッパ選手より3ヵ月も遅れるため、「試合のカン」が鈍り、本調子でないまま、メジャー戦に出なければならない、といった環境が、パットやアプローチなど、神経を使うワザに微妙に影響している。

 ところでアメリカの女子ツアーのメジャーでは、グレース朴選手が、アニカ・ソレンスタムなどトップ選手をおさえて初優勝という大偉業をなした。勝因はいずれもパットだった。思い切りの良いパットが決まった。

 メジャー戦の難しさは、全選手がベストコンディションで参戦してくることだ。もっとも男子と違い、女性には生理的なタイミングがあり、運・不運がつきものである。その点、男子には、女性のような悩み、不運はない。全て、ベストコンディションで戦える。

 しかしメジャーに勝てないのは、日本選手の立ち上がりが3ヵ月も遅れている、というジャンボ尾崎の指摘は理解できる。せめて3月末から毎週試合ができるスケジュールを組んでほしい。

※訂正とお詫び
 グレース朴選手の初優勝をウィー選手と誤って掲載しておりました。訂正しお詫び申し上げます。(編集部)

ジーコ日本代表の危機
(松原 明/東京中日スポーツ報道部)

 ワールドカップ目前のオマーン戦前、鹿島合宿中のホテルを無断外出、ジーコ監督の怒りを買い、追放された8選手の事件は、ドイツ2006大会を目指すサッカー日本代表の根本的な欠陥を暴露した事件になった。

 2002年10月、トルシエ監督から受け継いだジーコ監督は、サッカー史上最高の資金と対戦相手をセットされ、すでに、1年半も経過しているのに、いまだに、一致団結できない、とは、信じられない悪夢だ。

 サッカー協会は、なぜ、このような事件が起きるのか、なぜ、監督と選手が結ばれないこなか、解明しないまま、シンガポール戦を迎えた。

 この背景を見ると、1月、宮崎のフィジカル合宿から、約2ヶ月間、合宿の連続で、息抜きできない、ストレスがこのような形で出たもので、いかに、監督と選手が結び合っていないか、が分かる。

 トルシエ時代には山本コーチ(現五輪代表監督)が、パイプ役でつなぎ、縁の下の努力で爆発を食い止めていた。現在は、そのような日本人コーチが存在しない。

 この間の機微を察した、日本サッカー協会・川淵三郎キャプテンが「井原、柱谷ら代表主将を務めた男を入れたら」と、アドバイスしたが、ジーコは「必要ない」と拒否。つまり意志疎通がないまま試合を迎えた。

 あれほど、盛り上がりのない試合ぶりには魂が通っていない証拠ではないか。兄のエドゥー、GKコーチ・カンタレリとブラジル一家の現場首脳には別の人物が入る余地がない。だから、コミュニケーションがない。

 これでは、どことやっても苦戦が予想される。パイプ役になるはずだった、野見山代表部長も事件の責任を取らされた形でチームを離れた。今後、だれが団結の役目を果たすのか。

 このままでは、ドイツへ、など夢物語になる危機感を覚える。

センバツの爽やかな風
(佐藤 次郎/スポーツライター)

 新聞を読んでなかなか気分のいい読後感が残った。選抜高校野球の2回戦、鵡川と社の試合を報じた記事である。
 
 21世紀枠で甲子園を経験したのをきっかけに、北海道有数の強豪に成長してきた鵡川。レベルの高い兵庫から大会初出場を果たした社。両チームが延長14回まで熱戦を繰り広げた試合は、社が2−1で鵡川を下して決着した。決勝点は捕手の悪送球によるものだった。被安打6、1失点の力投を見せた鵡川のエース、宮田隼の204球は、ついに実らなかったのである。
 
 新聞を読んだ者の気分を爽やかにしてくれたのは、その宮田の試合後のコメントだった。各紙が報じたエースの談話はこのような内容だった。
 
 「満足しています。守備の乱れは仕方ない。緊張は誰だってするものだから」
 
 「エラーは仕方ない。自分が打てなかったことが敗因です」
 
 「(自分が)2アウトになって安心してしまった。走者へのけん制もなってなかった」
 
 「甲子園は本当にいい場所でした」
 
 鵡川は9回表の2アウトまで1−0でリードしていた。同点になったのも捕手の悪送球である。ベンチはすかさず動揺した捕手を代えたが、結局はまたしても同じような送球ミスで試合が決まった。宮田は相手打線をほぼ完璧に抑え込みながら、2つのエラーで敗れ去ったのだった。
 
 それでも彼が、悔しがったり愚痴をこぼしたりはいっさいしないで、傷心のチームメートをかばいつつ、笑顔で爽やかに試合後の感想を語ってみせたのは、各紙の記事にある通りだ。
 
 チームスポーツで、仲間のミスをことさら批判したりしないのは当たり前のことだろう。だが、これだけ気持ちのよいコメントはそうはない。エースの談話からは、本心からこの不運な負けを受け入れ、前向きにとらえようとする思いが伝わってきている。「緊張は誰だってするんだから」「甲子園はいいところだった」−−なんと気分のいい言葉だろうか。
 
 グッド・ルーザー、よき敗者はいつでも、スポーツを見る者の心に深い感慨を残していく。アテネ五輪の女子マラソン代表を逃した高橋尚子もそうだった。記者会見に応じた彼女の潔さは、すべてのスポーツファンにレースを上回る感動を与えたのではないか。負けた時、悔しい時ほどその人物の真価が問われる。グッド・ルーザーの姿は、ある意味でスポーツの華とも言えるものだ。そして今回は、この17歳の右腕投手が真のスポーツマンシップというものを見せてくれた。
 
 敗れた時には不機嫌さを隠そうともせず、ファンに対してひと言も発しないで去っていく姿は、プロやメジャースポーツでは珍しくない。そういうスターたちは、この高校3年生の姿勢をどう見るのだろうか。とはいえ、それは言っても詮ないことだ。スポーツを丹念に見ていれば、今回のように気持ちのよいシーンに出合えるのだから。これもまた、スポーツの大いなる楽しみのひとつなのである。
 
 ところで、競技に対してまっすぐな気持ちを持つグッド・ルーザーは、いずれはどこかでみごとな成功をおさめるものだ。とりあえず、鵡川のエースが夏の甲子園にやって来るのを楽しみに待つとしよう。



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