先ごろ、長嶋茂雄氏がダイエー・ホークスの新しいキャンプ地・宮崎市生目の杜運動公園の立派さに感激して宮崎市長にお礼の電話をした話を書いたが、今回は巨人の堀内恒夫監督が、これまた球界首脳陣がいうべきことを、きちんとチームに言っていることを書いておきたい。
堀内監督は巨人ナインに、「試合を3時間以内に終わらせよう」と提案し、次のような“ムダ排除の6ヵ条”を言い渡した。@場内アナウンスをもっと早くするA打者テーマソングを短縮するB打席へは早足ではいるCチェンジは7割走でD投手は打者よりも先に構えろEベンチ前での出迎え禁止。
どれもこれも野球を楽しみたいファンには、ありがたい話である。実際、今のプロ野球の進行状況はひどいもので、プレー以外のいらぬものがたくさんあり、そのためにダラダラ試合を見せつけられている。チェンジの時のノソノソした選手交代、打席に入るのに10秒も15秒もかけるのがいたり、入ってからも審判「待った」をかけるのが続出していたり。
選手のテーマソングの中にはいいものもあった。たとえば、ひところのヤクルト飯田の「お猿のかご屋」はよかった。曲が軽快でいかにも飯田が猿のように足が速いように感じられた。また、巨人清原の「とんぼ」のウウウウウウ…が外野から合唱で流れてくるのにいやな感じはしなかった。しかし、誰でもかんでもの垂れ流しで、また中年クラス以上には聞いたこともないようなのをやられて、「なんじゃここは」という感じになっている。
こういうのを、何とかしろ、と言い出すべきは、実はコミッショナーとか両リーグ会長ではないのか。彼らの会議では、よく「スピードアップ」が議題に上がる。しかし、監督会議などに出しても適当にあしらわれてしまっていた。求める方に切実な「どうしてもやるんだ!」という覚悟がないからである。その点、堀内監督は「3時間を越えたらオレはベンチにいないからな」と選手にいって、決意の固いところを見せている。
堀内監督が強く言い出したのは、実は日本テレビが、今年また放映延長を30分間に切り上げたことと関連しているようだ。昨年まで2年間、延長1時間制でやってきたが、G+だかなんだかの契約を増やすために地上波視聴者にしわ寄せする方針を打ち出している。おそらく地上波テレビ関係者から堀内監督が「試合時間を短くしてくれないか」と要望されたのだろう。それを堀内監督が受け入れてこういう措置を取ることにしたのだろう。その意味では、堀内監督はテレビのご都合主義のお先棒を担いでいるともいえる。
しかしプレー以外のムダ排除はテレビに関係なくやるべきことである。球界上層部が口を酸っぱくして現場に求めるべきことである。ただ念仏みたいに「スピードアップを」といっているだけで、出来ることではない。
監督自らが「ムダ排除」を選手にいえば効果はあるだろう。長嶋氏の球界を代表しての「感謝の電話」といい、堀内監督の今回のお達しといい、彼らがプロ野球界のリーダーになってきたことを示している事例であると思う。 |