沖縄はゴルフシーズンの真っ只中にある。その沖縄でJLPGAツアー開幕戦のダイキン・オーキッドがスタートし、新人プロの宮里藍(18歳)が、逆転優勝した。
先ほど高校を卒業したばかりの「高校生プロ」は兄の優作をキャディに使って、2人で戦って、2勝目を上げた。
今回の優勝は、地元での開幕戦とあって、測り知れないプレッシャーがあった。初日のラウンド後の夕食では家族で焼肉を食べてパワーをつけたが、胃液の不足から腹痛。最終日の朝は食事がノドを通らず、水を呑んで戦った。
個人競技のプロの試合は、重圧で眠れない夜もある。2時間睡眠はまだいい方で、一睡もできない人もいる。宮里藍も、殆ど眠れなかったという。まして18歳の新人。また地元声援に応えなくてはいけない、と考えると、不安は数倍にふくらむ。
そんな藍を助けたのは、キャディをつとめた兄・優作である。スタートホールでボギーを叩くと「ボギーのひとつくらいくれてやれ」といって励ました。また肩に力が入っていると、肩を揉んでやったり、緊張していると、ジョークを飛ばしてリラックスさせたりした。圧巻は17番ミドルホールのバーディである。ここで肥後かおりと2打差となり、勝敗が決まった。
私は「ゴルフスタイル」誌に「風の兄弟」という小説を連載中だが、8年前から宮里家に出入りしていた頃から書き出している。藍ちゃんがまだ小学校6年生だった。「何ごとも努力」「勉強一番、ゴルフは2番目」と教育してきた父・優さんの指導は、普通の子育てだが、逆境の中で、子どもたちは花を咲かせた。
何よりも、藍ちゃんの優勝は、「プロテストを受けなくてもプロの道を歩ける」ことを教えた。事実、彼女は推薦プロとして第1号の優勝者である。アメリカではタイガー・ウッズが、同じ道でプロになり王者になった。
日本では、女子プロ第1号の人たちが、推薦プロの形でスタートした。その1人が王女の樋口久子だった。その意味では、「何でもテスト、テスト」のやり方は、いいプロを育てない、ことを教えている。
今後も、中学、高校生たちは、男女とも、そうした道で、自分の道を切り開ける。したがって、プロテスト制は、廃止すべきである。まして年1回のテスト制はよくない。やるなら年2回制にして、チャンスを与えるべきである。できれば廃止して、「自己宣言」制にし、ツアー出場資格のテスト制にすべきだ、と提案したい。
ツアーに出られない人は「プロとして指導に当たる」といったレッスンプロ制度を設けるなど、たくさんのプロを育てる方法を考えて欲しい。これは男子プロゴルフ界にも言える。
もう1点は、スタープロを海外に出さないような環境を作るべきである。男子プロは若者が賞金の高いアメリカツアーに出てしまい、国内ツアーはスター不在の現状であることを、深く反省して欲しい。
女子プロ界では、賞金1億円をプロデュースすることも急務である。 |