夏休みと日本勢の活躍でアテネ・オリンピックのテレビ視聴率はなかなか好調だったようだ。 このムードが、日ごろのスポーツ中継に引き継がれていくか、となると心細い。各局は「オリンピックだから」と、なじみのないスポーツにも時間を割いた。
その面では、活字メディアによるリードが今大会も大きな力を示した。新種目・レスリング女子がその典型だろう。 NHK・民放、それに地上波・空中波。チャンネルの選択肢は、これまでとは比べものにならないほど増え、総放送量(放送時間数)も一桁違ってきたが、「4年にいちどのお祭りだ」という割り切りがある。
テレビ局のオリンピック至上主義、裏を返せば、4年ごとのお付き合い、巨額放送権料の“回収”と言える。 ただ、これだけ茶の間にオリンピックがなだれ込めば、スポーツへの関心、チームや選手への興味は、いやでも沸いてこよう。
スポーツ界が、それを「さすがオリンピック」「だからオリンピック」とはしゃいでいては、何もならない。今後にどう活かすかだ。 国内での大会(国際試合を含めて)で、いかにオリンピックの熱気に近いパフォーマンスを展開できるか、スポーツ団体・組織が金メダル作戦と並んで、力を注がなければいけない課題である。
「見るスポーツ」が盛んに言われながら「見せるスポーツ」の姿勢は極めて甘い。多くの大会は、一般観戦者へのサービスに欠け、関係者中心の身内のイベントでよし、とされる。
アテネでの勢いを、あらゆる面で引き継ぎ、引き伸ばして欲しい。それが成らねば「4年にいちど」しか花は咲かないことになりスポーツ風土は浅薄なままで時を過ごすことになる。
話は一変するが、オリンピック番組の活気に比べ、ベースボール(プロ)のテレビ中継は、低い数字(視聴率)からはい出せないままでいる。 球界再編問題をめぐるさまざまな発言や不透明な流れが、不人気の色をいっそう濃くした。
関係者は、心配するほど観客数は減っていない、アテネ・オリンピックの日本―オーストラリア戦の視聴率(関東地域19.3%=ビデオリサーチによる)は悪くない、など楽観的だが、これまた甘い。
根強いパワーを誇るベースボール。アテネに対抗できる話題が、わずかに「駒大苫小牧の優勝」だけだという貧しさに、少しは“緊張”すべきではないか―。 |