アテネ五輪の野球日本代表はどんなメンバーになるのだろうか。去年のアジア予選のメンバーを中心にしながら新たに選ぶことになっているのだが、そのアジアメンバーが揃って不調なのである。
去年の日本代表のエースは巨人の上原と西武の松坂だった。しかしこの二人とも、今年は実に心もとない。
上原は、「100球肩」になっている。かつての江川のような「経済性」の手抜きではなく、全力投球で完投する「体力」がなくなっているのだ。走りこみや徹底的な体力強化をしなかったツケである。
松坂は、良かったり悪かったりが極端な「並みの投手」になっている。専門家は「精神的にもろくなってきた。捕手が伊東でなくなった影響もある」というが、去年だって必ずしも捕手が伊東ではなかった。これも心身の強化の失敗である。
おかしくなっているのは先発エースだけではない。中日岩瀬、ロッテ小林雅の2人のクローザーも狂っている。去年の投手で今年もそこそこやっている投手はダイエーの和田くらいで、広島の黒田も去年の後半戦の力に戻っていない。
野手もひどいものだ。セ・リーグから代表になった中日福留・井端、巨人高橋由・二岡、主将を務めたヤクルト宮本も悪戦苦闘中である。西武の松井稼頭央はもういない。
健在なのはパ・リーグの日本ハム小笠原、ダイエー城島、オリックス谷、西武和田の4人だけである。
長嶋監督の下で「日の丸のために」と一致団結したナショナルチームの再編は、どうにもおぼつかないのだ。新しい“寄せ集め”になりそうなのだ。このことは団体競技では決定的なマイナス要因である。
代表を決めるのは6月下旬。いまのままの成績から選ぶとすれば、投手はセから中日川上・山本昌、阪神福原・藪、巨人上原・工藤、横浜佐々木ら。パから近鉄岩隈・川尻、日本ハム金村、西武大沼、ロッテ渡辺俊、小林宏らが第1次の候補といえるだろう。
野手ではダイエー松中、城島、日本ハム小笠原、西武和田・中島、オリックス谷・村松、巨人阿部、ヤクルト古田、広島前田・嶋、中日井上、阪神今岡・矢野らということになる。
これらの中から選べば、斬新といえば斬新だが、いかにも“寄せ集め”の感じが否めない。また、カリスマの長嶋茂雄監督がまだリハビリ中とあって、代表を決める船頭がいない。中畑、高木、大野の3コーチが選ぶことになるのだろうが、決める眼力があるかどうかも疑問で、決めたところで、長嶋ジャパンのような団結ができるかどうか、もっと疑問だ。
サッカーは、同じプロを集めるのでも年に何回も同じチームで練習試合している。野球は、不振・不成績・スランプ・実力低下・故障上がりを無視して同じメンバーを集めようとしても、今度は「1球団2人」のワクがある。どう転んでも“急造寄せ集め”にならざるを得ないのだ。
こうなっては、せめて“斬新なチーム”として期待するか、あるいは期待しない方がいいかもしれない。この暗い見通しを明るくするのは長嶋監督の奇跡的な早期完全回復を祈るしかない。奇跡は起きるか。 |