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2004アテネオリンピック世界最終予選/男子
日本×中国
杉山マルコス

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vol.201(2004年5月26日発行)

【杉山 茂】「ツアー・オブ・ジャパン」に熱狂の日は来るか
【高田実彦】見通し暗い五輪野球
【佐藤次郎】スーパー40代に乾杯
【岡崎満義】「野球選手の愛称」考

筆者プロフィール

vol.200 2004年5月19日号「7回制ベースボール・・・」
vol.199 2004年5月12日号「サッカー選手の体力・・・」
vol.198 2004年4月28日号「スポーツ界の連係・・・」
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「ツアー・オブ・ジャパン」に熱狂の日は来るか
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 自転車競技の面白さが、日本では、なかなか根付かない。

 ロード、トラック、マウンテンとそれぞれに味があり、見方をのみこめば楽しいのだがヨーロッパなみのムードに囲まれるまでには、まだまだ時間がかかりそうである。

 昨年、新型肺炎(SARS)の影響で休会となった国内最大級のステージレース「第8回ツアー・オブ・ジャパン」が、2年ぶりに5月23日大阪・堺市をスタートした。30日東京の最終(第6)ステージまでヨーロッパ勢を含め力走をつづけるが、熱心なファンはともかく、各地とも「レーサーが通過していく」程度で、陸上競技のロードレース(マラソン、駅伝)の熱気にはとうてい及ばない。

 このレースは、前身の「国際サイクルロード」が82年から始まっており、20年以上の歴史がある。本場ヨーロッパで最高の「ツール・ド・フランス」がテレビで放送されたタイミングとも合い、自転車競技の“日本定着”を期待させたのだが、地味なままだ。

 ヨーロッパのレースと違い、各ステージ(今回は6市)を結ぶ“連続性”がないのも興味をそぐが、日本選手への関心が低いのが致命的といえる。

 ヨーロッパでは、レーサーの人気がサッカー選手なみに高いうえ「ツール・ド・フランス」は発案者でもあるスポーツ紙「レキップ」が、連日、スターを軸に巧みなストーリー作りで煽る。トップクラスの禁止薬物汚染で、評判を落としかけたが、「ツール好き」に支えられた。伝統の強さでもあろう。

 スターとメディアが、これほど巧みにからみ合うのも珍しい。今年はアームストロング(アメリカ)の史上初の6連覇がかかり、いっそうの人気という。

 近年は、難所もテレビ中継でカバーされ、世界有数のイベントともなった。

 日本のスポーツ界は、メディア、特にテレビ界と“一体”になって話題を仕立て上げていくのが不得手だ。全般に主人公不足でもある。

 本体の影を薄くさせるような過剰なショウアップは論外としても「見せる」ための工夫はいくらでもあろう。

 自転車競技もまずは全国の競輪場をホームとして「単一型多世代スポーツ(自転車)クラブ」を発足させ、スターサイクリストを生むようなアイディアを積み重ねてレースや競技会を身近なものとすべきだ。ステージレースは季節感も盛り込める。

 「ツアー・オブ・ジャパン」が、ひっそりと公道を走り抜けているのは、いささかもったいない―。

見通し暗い五輪野球
高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 アテネ五輪の野球日本代表はどんなメンバーになるのだろうか。去年のアジア予選のメンバーを中心にしながら新たに選ぶことになっているのだが、そのアジアメンバーが揃って不調なのである。

 去年の日本代表のエースは巨人の上原と西武の松坂だった。しかしこの二人とも、今年は実に心もとない。

 上原は、「100球肩」になっている。かつての江川のような「経済性」の手抜きではなく、全力投球で完投する「体力」がなくなっているのだ。走りこみや徹底的な体力強化をしなかったツケである。

 松坂は、良かったり悪かったりが極端な「並みの投手」になっている。専門家は「精神的にもろくなってきた。捕手が伊東でなくなった影響もある」というが、去年だって必ずしも捕手が伊東ではなかった。これも心身の強化の失敗である。

 おかしくなっているのは先発エースだけではない。中日岩瀬、ロッテ小林雅の2人のクローザーも狂っている。去年の投手で今年もそこそこやっている投手はダイエーの和田くらいで、広島の黒田も去年の後半戦の力に戻っていない。

 野手もひどいものだ。セ・リーグから代表になった中日福留・井端、巨人高橋由・二岡、主将を務めたヤクルト宮本も悪戦苦闘中である。西武の松井稼頭央はもういない。

 健在なのはパ・リーグの日本ハム小笠原、ダイエー城島、オリックス谷、西武和田の4人だけである。

 長嶋監督の下で「日の丸のために」と一致団結したナショナルチームの再編は、どうにもおぼつかないのだ。新しい“寄せ集め”になりそうなのだ。このことは団体競技では決定的なマイナス要因である。

 代表を決めるのは6月下旬。いまのままの成績から選ぶとすれば、投手はセから中日川上・山本昌、阪神福原・藪、巨人上原・工藤、横浜佐々木ら。パから近鉄岩隈・川尻、日本ハム金村、西武大沼、ロッテ渡辺俊、小林宏らが第1次の候補といえるだろう。

 野手ではダイエー松中、城島、日本ハム小笠原、西武和田・中島、オリックス谷・村松、巨人阿部、ヤクルト古田、広島前田・嶋、中日井上、阪神今岡・矢野らということになる。

 これらの中から選べば、斬新といえば斬新だが、いかにも“寄せ集め”の感じが否めない。また、カリスマの長嶋茂雄監督がまだリハビリ中とあって、代表を決める船頭がいない。中畑、高木、大野の3コーチが選ぶことになるのだろうが、決める眼力があるかどうかも疑問で、決めたところで、長嶋ジャパンのような団結ができるかどうか、もっと疑問だ。

 サッカーは、同じプロを集めるのでも年に何回も同じチームで練習試合している。野球は、不振・不成績・スランプ・実力低下・故障上がりを無視して同じメンバーを集めようとしても、今度は「1球団2人」のワクがある。どう転んでも“急造寄せ集め”にならざるを得ないのだ。

 こうなっては、せめて“斬新なチーム”として期待するか、あるいは期待しない方がいいかもしれない。この暗い見通しを明るくするのは長嶋監督の奇跡的な早期完全回復を祈るしかない。奇跡は起きるか。

スーパー40代に乾杯
佐藤 次郎/スポーツライター)

 ベテランが元気だと嬉しくなる。こちらも年齢を重ねて、つい年かさの選手にばかり目がいくからでもあるが、もちろんそれだけではない。さまざまな経験を積み重ねてきた大ベテランには、若手とは違った深い味があり、それがゲームや競技そのものの味わいも増しているのである。
 
 たとえば、ことしは米メジャーリーグでベテラン投手の活躍が目立っている。中でもランディ・ジョンソンの完全試合は圧巻だった。40歳8カ月でのパーフェクト達成は、世界中のスポーツファンを心底驚かせ、感嘆させた。208センチの恵まれた体と飛び抜けた才能あってこその快挙ではあるが、それでも40代の完全試合は否応なしに人々の心を揺り動かす。そして、これがなんとも素晴らしいのは、たくさんの中年以上の人々を励まし、勇気づけたに違いないからだ。

 大ベテランのみごとな活躍は、時としてファンたちにただのプレー以上の何かを感じさせるのである。
 
 ヤンキースからアストロズに移籍した41歳のロジャー・クレメンスも開幕からの連勝を続けている。この時点で負け知らずの7勝はリーグのトップだ。引退を表明し、盛大なセレモニーまでやった末の意外な復帰とあって、激しいブーイングも浴びせられた復活劇だったが、これだけの活躍を見せられては、もはやファンたちも拍手を送るしかあるまい。
 
 日本のプロ野球では、こちらも41歳の工藤公康が開幕から5連勝の活躍を見せている。先だっては阪神戦で完投もした。5人の子どもを持つ中年男の大奮闘は、文句なしに痛快だ。ファンとしても、こうなればひいきチームを抜きにして声援を送ることになる。
 
 最近はトレーニング方法の進化などによって、どの競技でも選手寿命がどんどん伸びている。が、それだけで誰もが40歳まで力を保てるわけではない。スーパー40代たちはおそらく、トシに関する世間的な常識にいっさいとらわれていないのだろう。「そろそろ限界かもしれないな」「もういいトシだから、第2の人生を考えておこう」−−などとは爪の先ほども考えないのだろう。
 
 常識というものは、もちろんたいがいは正しいのだが、時にはそのしばりを外れてみると、思わぬことが見えてくる。素晴らしきスーパー40代たちの大活躍は、「30代の半ばを過ぎたら、もういままで通りのプレーは難しい…」とか「40歳を超えて現役を続けるなんて、とてもとても…」といった“常識”を無視するところから始まったに違いない。そして、彼らは常識をすっかり忘れるほどに、プレーすることを愛しているのだろう。
 
 ボクシングの世界では、リングを遠ざかっていた41歳のイベンダー・ホリフィールドが、世界ヘビー級の王座復帰を目指していると伝えられている。45歳で再び王座についたジョージ・フォアマンの例もあるとはいえ、ヘビー級としては小柄なホリフィールドの再挑戦は、無謀なものとして批判を受けるかもしれない。だが、何度となく劣勢の前評判をはね返してきた男である。栄光も失意も味わい尽くしてきた40男だからこそ、何かをやってのけるかもしれないと思わせるところが、この大ベテランにはある。
 
 ともあれ、再起戦はぜひとも実現させてほしい。結果はどうあれ、これもまた大勢の中高年を刺激する戦いになるはずだからだ。

「野球選手の愛称」考
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 ダイアモンドバックスのランディ・ジョンソン投手が、5月18日、対ブレーブス戦で史上最年長(40歳8ヵ月)での完全試合を達成した。日本でも同い年の巨人・工藤投手が好調だ。昔ならとっくに引退しておかしくない年齢だが、トレーニング法の発達などもあってか、選手の現役年齢が大幅に伸びているのはうれしいことだ。五輪出場を決めた女子バレーボールの吉原選手も34歳。スポーツは若者だけの独占物でないことを、華麗な、あるいは渋いプレーで見せてくれるのは、まことに楽しく、またありがたいことである。

 ところで、身長208センチのジョンソン投手の愛称は「ビッグユニット」。巨大構造物体、とでもいったらいいか。この愛称を聞いてすぐ思い出したのは、西鉄ライオンズ黄金時代のサード中西太の「冷蔵庫」である。かた太りのずん胴はまさに冷蔵庫。ボックスで巨大な尻をブルンブルンと震わせてかまえた姿がなつかしい。投手の頭をかすめた打球がグーンと伸びて、そのままバックスクリーンに飛び込んだとか、ファウルチップすると、ボールの皮の焦げた匂いが投手の鼻をついたものだとか、いくつも伝説を残している。バットスイングが鋭すぎて手首を痛め、腱鞘炎と診断された第1号でもあった。

 スポーツ選手に愛称、ニックネームがつけられるのは、ジョンソンや中西が示しているように、その選手の姿かたちに大きな特徴のある場合が多いが、やはり何よりもプレーがすぐれていなければならない。一芸に秀でるものをもっていることが必要条件のように思える。

 思いつくままに愛称をあげてみると―ゴジラ松井、大魔神佐々木、トルネード野茂、最新は赤ゴジラ嶋(広)。少し前なら怪物江川(巨)、ブンブン丸池山(ヤ)、ドカベン香川(南)、マサカリ投法村田(ロ)、鉄人衣笠(広)、ザトペック投法村山(神)、悪太郎堀内(巨)、一本足王、ミスター長嶋、ひと昔前には、ポンちゃん大下(西)、サイちゃん稲尾(西)、超二流河野(西)、打撃の神様・テキサスの哲川上(巨)、じゃじゃ馬青田、逆シングル白石(巨)、塀際の魔術師平山(巨)、眠狂四郎土屋(巨)、牛若丸吉田(神)、物干し竿藤村(神)、ヘソ伝山田(急)などなど。こうして書き出してみると、強い人気チームのメンバーであることも、大事な条件であることがわかる。

 スモウにも、マムシ栃錦、起重機明歩谷、潜航艇岩風、黒い弾丸房錦、ウルフ千代の富士など。野球でもスモウでも、最近は愛称のつく人が少なくなったような気がする。よく言われるように、スポーツ選手も平均的なサラリーマン化してきた、ということだろうか。

 しかし、何といっても最高の愛称は、ONとイチローだろう。時代をつねに「ON」の状態にしつづけた王、長嶋コンビ、そして何でも一番の「イチロー」だと思うのである。

 


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