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vol.196(2004年4月14日発行)

【杉山 茂】勢いを取り戻せるか男子テニス
【高田実彦】欠陥だらけのテレビ中継
【佐藤次郎】彼らの夢が疾走する日


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勢いを取り戻せるか男子テニス
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 男子テニスが、インドを制して6年ぶりにデビスカップ・ワールドグループとの入れ替え戦出場のチャンスをつかんだ(4月9〜11日・大阪)。

 往時の活況を取り戻すには、ほど遠いし、まだまだ底辺に近いところで、もがいているようなものだが、嬉しいニュースには違いない。

 インドに勝ったのは1930年以来という。74年前の勝利を思い出す人は、もはや少なかろう。それどころか、インドに勝つことを宿願とし、はね返されつづけてきた“近年”の対戦さえ、ファンの関心からは薄いものになってしまっていた。

 グランドスラムを含むワールドツアー全盛の時代、国別対抗戦の魅力を保つのが難しいのは事実だが、日本チームの低迷も一因にある。インド戦どころか、デビスカップそのものへの熱狂を遠ざけてしまったのだ。

 最近のスポーツマスコミの姿勢は内外のベースボール、サッカーに偏りすぎるとされるが、今回のテニスの快挙(?)には、各紙のスポーツ面が夕刊に限られた日にも拘らず、かなりのスペースが割かれた。

 「デビスカップの伝統」以外の何ものでもない。プレイヤーたちは、こうした動きに敏感であって欲しい。デビスカップという舞台で戦う意味と歓びを例え地域グループや入れ替え戦であっても、感じとり、誇るべきだ。その試合ぶりが、新たなテニスファンを獲得することは間違いない。そこにはツアーとは異なった興奮もある。

 テニスに限らない。国内スポーツのかつてのビッグシーンが、いつのまにか勢いを失ってしまっている。地球規模で情報がかけ巡る時代も影響はしているが、関係者や競技者たちが、自らの足元を軽んじては、ファン、マスコミを動かせるわけがないのだ。

 かつて、デビスカップの「東洋ゾーン」で、会場が沸いていたのは、74年も、50年も前にさかのぼる昔ばなしではない。つい、この間のような気がする。それだけ、下降のスピードが早かったともいえる。

 ワールドグループ昇格へつながる9月下旬の入れ替え戦の相手はチリ。相手国での対戦のようだが、新しい時代の幕あけを心待ちにしていよう―。

欠陥だらけのテレビ中継
(高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 今年もテレビの巨人戦線は苦戦しそうである。開幕の3連戦の初戦で日本テレビの平均視聴率(関東地区)が17.9%。去年より1.7%高かっただけで、「低い低い」と大騒ぎである。

 当たり前である。日テレの野球中継が番組としてなってないからである。まず第一にアナウンサーが最悪である。あのカン高い声はなんだ。

 テレビで野球を見るファンは、ビール片手かごろんと横になってのんびりしているものだ。そのときに耳をつんざくようなカン高い声でわめき散らすのは騒音公害である。

 しゃべりすぎである。テレビが映しているのだから黙ってろ。野球は間があってこそおもしろいのだ。淡々としゃべって、間をおけ。引きずられて解説者までカン高い声でしゃべりづめだ。

 解説者につまらぬ質問をするな。解説者も答えるな。「次は何を投げるでしょうかね」。見てりゃわかるだろ。「打ちますかね」。解説者は予想屋か。

 アナは、くだくだ巨人選手の近況報告だか取材成果だか知らないが、飲み屋の談義みたいなネタをトクトクと披露するな。

 巨人選手をヨイショするな。おもねるな。おべんちゃらをいうな。巨人選手がポテンヒットを打ったからといって、興奮してみせるな。

 こういうアナが仕切っているから番組がつまらなくなるのだ。NHKは野球放送だけは、まあまあの線、にいっているからNHKを見て少しは勉強する必要がある。

 CMが長すぎて1アウト2アウトが見られないこともしょっちゅうだ。しかも今年はまた尻切れをやるという。ふざけるな!

 他にも文句はたくさんあるが、G+だかなんだか知らないが、そういう有料放送を見られないファンは、音声を消して地上波の画面を見ていることを知るべきである。

 これらの日テレ欠陥野球中継の歴史は今に始まったことではない。アナについていえば、もともと悪い先輩が多かった。それでも視聴率が上がっていたのはチームに人気があったからだ。

 ついでにカン高い声といえば、深夜に近い時間でTBSの筑紫哲也の番組に出ている元NHKのなんとかいう女子アナだかキャスターだかも、どうしてあんなにカン高い声を出すのだ。バカ丸出しだ。

 久米のあとに始まった古舘とやらの番組も、何時だと思っているんだ。夜中にカン高い声でわめくな。この番組を若い人が見ているわけないだろ、見ているのは中年以上の大人だ。もっとしっとり、というか落ち着いた話し方をしたらどうなんだ。

彼らの夢が疾走する日
(佐藤 次郎/スポーツライター)

 エリート街道まっしぐらのスターを、それとは正反対の道をたどってきた非エリートが鮮やかになぎ倒すという構図は、いつの時代もスポーツの醍醐味のひとつだ。巨額な資金や恵まれた環境がなくては勝利を得られないというのでは、スポーツはちっとも面白くない。さまざまな可能性を秘めているからこそ、それは人々を強く惹きつけるのである。
 
 4月18日には中山競馬場でそんなシーンが見られるかもしれない。その日は、中央競馬の最高峰であるGTレースの中でもひときわ人気の高い3歳クラシックレースのひとつ、皐月賞が行われる。ファンたちの注目を集めているのは、ホッカイドウ競馬から参戦してくる鹿毛の牡馬、コスモバルクだ。

 中央の有力馬の中にただ1頭加わる地方競馬の星は、超エリートたちを押しのけて堂々と本命の評価を受けている。もし彼がトップでゴールを駆け抜ければ、それは史上初めて地方所属馬が中央のクラシックレースを制する歴史的瞬間となる。
 
 中央と地方では馬のレベルがまるで違っているのは言うまでもない。高額で取引される良血馬から、さらに選び抜かれたスター候補生が中央に行き、地方には残った馬たちがやって来る。景気の後退で地方競馬の売り上げがどこも大きく落ち込むようになってからは、ますますその差が開いてきた。そしてまた、中央競馬の中でも、サンデーサイレンスを筆頭とする超一流種牡馬の産駒でなければなかなか勝ち抜いていけないような状況になっている。激しい競争の中では仕方のないこととはいえ、非エリート的存在にとって、可能性は著しく狭められつつあるのである。
 
 そこへ現れたのがコスモバルクだ。父のザグレブは、これまでは種牡馬としてあまり評価が高くなかった。数千万円、あるいは億を超える価格の馬が居並ぶ中で、コスモバルクの購買価格は400万円と伝えられている。昨年8月のデビューから4戦は目立たないホッカイドウ競馬で走った。その、大きな可能性などとても望めそうもないように見えた馬が、中央との交流戦に挑んでからは、重賞2勝を含む3連勝を飾って、ついに皐月賞の本命にまでのし上がったのだ。
 
 交流が進んだとはいえ、地方馬が中央に参戦するにはいろいろとハンディがある。レース直前の長時間の輸送。慣れない環境。ほとんどダートでしか行われない地方のレースとはまったく違う芝コースの戦い。しかも、目的のクラシックレースに出るには、その前のステップレースを勝ち抜かねばならない。そのすべてを克服して、コスモバルクはここまでやって来た。
 
 中央で戦った3戦ともに、戦いぶりは力強かった。並びかけられればさらに力を振り絞り、少々不利なレース展開でも最後にはぐいと抜け出してみせた。スマートで切れ味鋭い中央の馬とはひと味違う、いかにもたくましい走りは、たとえエリートでなくてもこれだけの可能性を秘めているのだと、スタンドの観衆に声高く叫んでいるようにも感じられた。
 
 中央と地方のトップ騎手の技量に差がないのは、安藤勝己をはじめとする地方出身ジョッキーの大活躍が示す通りだ。コスモバルクにはホッカイドウ競馬の五十嵐冬樹が騎乗する。もちろん地方騎手の中央クラシック勝利もこれまでにない。人馬ともに、かつては夢にも思わなかったに違いない、大きな大きな可能性に向かって中山のターフに赴くのである。
 
 最近はどの競技でも同じ状況になりつつある。子どものころから選び抜かれたエリートがスターになっていき、それ以外の存在が割って入る余地はほとんどない。資金をかければかけただけ、恵まれた環境をつくればつくっただけ成績が上がっていき、質素なやり方ではとてものことに頂点など望めない。チームにしろ個人にしろ、その図式は変わらないのである。

 が、そればかりになってしまっては、スポーツはしだいに人気を失っていくに違いない。どこにでも可能性があるはずだからこそ、スポーツは魅力的に輝くのだ。この18日、コスモバルクが期待通りの走りを見せてくれれば、たくさんの人々が、「よし、自分も」と力強く拳を握りしめるだろう。



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