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2004/アテネ
第116回IOC総会
ジャック・ロゲ会長

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vol.212(2004年8月11日発行)

【杉山 茂】幻滅誘うオリンピック招致の闇
【高田実彦】人気取りミエミエの議員連盟
【岡崎満義】室伏広治選手の身体感覚

「あしたのアテネ」随時メルマガ発行予定
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筆者プロフィール

vol.211 2004年8月4日号「“松本紀彦さん”・・・」
vol.210 2004年7月28日号「“出ごと”・・・」
vol.209 2004年7月21月7日号「プロスイマー時代・・・」
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幻滅誘うオリンピック招致の闇
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 “黒い存在”が噂の域にあるうちは、否定する側も強い姿勢を示し共感も得られるが、それが事実に近いとなれば失望、幻滅(げんめつ)の悲哀は、深くなるばかりだ。

 オリンピック招致をめぐる買収疑惑・・・・・・。

 8月4日夜、イギリス放送協会(BBC)が放送した報道番組は、タイトルも「オリンピックを買う」というセンセーショナルなもので、世界の主要テレビ局が、この番組の一部をニュースとして採りあげ、波紋を広げた。アテネ・オリンピック開幕まであと9日という時点、ショック度も大きい。

 日本の各局が報じた内容をまとめると番組の大筋は、集票を手がけるエージェントが、国際オリンピック委員会(IOC)のメンバーに接触し、買収工作を仕掛けるシーンや会話が、ロンドンの企業コンサルタントを装ったBBCの記者に隠し撮りなどで暴かれる。

 エージェントの存在や、マネーと引きかえに1票を差し出すメンバーが居るようだとの風聞は、オリンピック開催地の投票が行われるたびにささやかれていた。

 オリンピックではないが、2002年のワールドカップ開催地をめぐって日本と韓国が激しい争いをくり広げていた時、日本サッカー協会の首脳の1人は、「週に一回は、エージェントを名乗る見ず知らずの人が、票を集めてあげよう、といった声をさまざまなルートから伝えてくる」と苦笑まじりで話してくれた。

 スーパーイベントの誘致合戦では、必ずつきまとっていた“話題”でもある。

 オリンピックともなれば、その跳梁(ちょうりょう)は凄まじかったに違いない。だがその正体は闇のなか。そこにBBCは潜入したのだ。

 オリンピック招致をめぐる疑惑は、最近では98年のソルトレークシティー冬季大会(アメリカ)が生々しい。

 IOCは、この騒ぎで6人の委員を追放し、委員の現地視察を禁止するなどを盛りこんだ招致のルールを定めた。

 総てに透明性を求めるジャック・ロゲIOC会長(ベルギー)は、このルールの施行で一息ついたハズだったが、根は浅いものではなかったようである。

 疑惑を報じられた委員をすぐに資格停止処分とし、IOCは、イメージの回復に懸命で、アテネにおける諸会議では倫理に違反する行動への警告が発せられている。

 BBCが報じた買収工作は2012年の夏季オリンピック開催地をめぐってのものだ。

 今年5月、候補地の1次選考が行われ、来年7月のIOC総会(シンガポールの予定)で、投票が行われるのはロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、マドリード(スペイン)、モスクワ(ロシア)のヨーロッパ4都市とニューヨーク(アメリカ)にしぼられている。

 BBCの記者は、ロンドンのために票を集めようとする企業の社員を装っていたが、取材の狙いも興味あるところだー。 

人気取りミエミエの議員連盟
高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 またぞろ国会議員が出しゃばりだした。出しゃばってもいいが、いまの出しゃばり方は「1リーグ制への移行反対」の立場だというから話にならない。

 自民党の議員連盟は「2リーグを守り、プロ野球の発展を図る議員連盟」という名前で、その趣旨は、「一部オーナーの都合で急速に1リーグ制を決めようという愚かな行いを阻止する」ためだという。

 民主党のそれは、「日本プロ野球の更なる飛躍・発展とスポーツ文化振興による地域活性化を推進する会」だという。

 国会議員なのだから何を取り上げてもいいが、両党ともに、問題に対する“真摯さ”がない。
 自民党は頭から「2リーグ制維持」を謳っているのだから、これは発展のために検討する会議というより、旗幟(きし)鮮明な「反対同盟」である。だから「愚かな行い」と決めつけているのだろう。

 また、「一部オーナーとは何人で、誰をさしているのか」明解でない。

 いま1リーグに賛成しているのは、西武、オリックス、ロッテ、ダイエー、近鉄、日本ハム。つまり12球団の半分で、これに巨人が加わるから、過半数が1リーグ制論となる。ファン・レベルなら巨人の渡辺オーナーと西武の堤オーナーが「一部の横暴なオーナー」と錯覚しても仕方がないが、国会議員たる者は、もっとマジメに現実を見て、的確な言葉を使ってほしい。

 民主党の会は、下をかみそうな長ったらしい名前からしてナンセンスだ。こういう趣旨の会なら合併問題が起きなくても、常設しておいて、いつでも発言したらいいではないか。標題にある趣旨は、何にでも当てはまる基本的なものである。

 したがって両党とも、騒動に便乗して人気を取ろうというスケベ根性がミエミエである。 
 だから根来コミッショナーに一発で反論されるのだ。根来さんは「1リーグ、2リーグというのは金の問題。議論していただけるのはありがたいが、それなら国から補助金を出してくれんか」といった。何もしないコミッショナーだが、これだけは、よくぞいったぞ。

 国会議員がプロ野球の騒動に関心を持つのなら、関係者を呼んで事情を聴いて、ファンに公開しない「球団経理の実態」を明らかにすることや、合併せざるを得なくなった「真因・原因」を質すこと。業界の憲法である「野球協約」におかしいところはないのか。などの検討をすべきではないのか。

 こういうと、「われわれは忙しい。そんなにねっちりやってられないよ」ということだろう。きっとそうに違いない。

室伏広治選手の身体感覚
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 先週、テレビで見たハンマー投げの室伏広治選手のことを書いてすぐ、彼のインタビューを読んだ。新刊「五輪の身体」(齊藤孝)に、アテネ五輪に出場するアーチェリー山本博、レスリング浜口京子、体操塚原直也、柔道野村忠弘、トライアスロン中西真知子とともに、そのトップに室伏選手のインタビューがのっていた。

 インタビューアーの齊藤孝さんは「声に出して読みたい日本語」「身体感覚を取り戻す」などの著書で知られる、今もっとも売れっ子の大学教授だ。

 この本の特徴は、トップアスリートたちがどんな身体感覚、運動感覚をもって競技をし、練習をしているか、について具体的に訊いている点にある。よくあるスポーツの勝敗もの、根性ものとはひと味違うユニークな本に仕上がっている。

 中で、室伏選手のインタビューが一番おもしろかった。世界のトップ中のトップの選手としての実績が、発言に説得力を与えているのはたしかだが、それ以上に、自分の身体感覚を自分の言葉で、イメージ豊かに話していることに感心した。

 わたしは1980年、モスクワ五輪に日本が不参加を決定した時、名古屋のたしか中京大の宿舎で、室伏重信さんをインタビューしたことがある。五輪ボイコットをめぐってのインタビューだったと思うが、雑談の中で重信さんは「子供の頃はなるべくいろんなスポーツをやらせるのがいい。早くから1つのスポーツに固定するのはよくない」と強調していたことが、印象に残っている。

 そのときの広治選手は5〜6歳、妹の由佳さんはまだ赤ん坊で、お母さんのセラフィナさんに抱かれていたように記憶する。

 広治選手が抜群の運動能力を身につけ、さらに豊かな身体・運動イメージを言葉で的確に表現できていることに、なんとはなく深い感慨を覚えた。

 その広治選手の言葉―

「(動き出しは)肚と背ですね。背の感覚を磨くと、やっぱり(回転の)スピードが出てきます。肚と背から入って、次は筒になります。斜めに倒すにしても、中身がこぼれないようにイメージすれば、軸がブレない。(中身は)気体でもいいですね。中身がない感じで」

 「いくら鍛えて握力があるといっても、せいぜい100キロぐらいですから、(回転の遠心力で)300キロ、350キロという(鉄球の)重さを支えられるわけがない。だから、より受け身に徹さなきゃいけない。飛ばそうと思えば思うほど、受け身になっていく」
 
 「なんか宇宙っぽいんですよ。僕とハンマーが回転しながら、さらにサークルに沿って回っている。自転と公転みたいな。そこのバランスが全部うまくとれなきゃいけない。僕はコスミックスポーツって呼んでるんですけど」

「もちろん、力も必要なんですよ。でも、どんなに鍛えようが、遠心力や重力には勝てない。だから、別の力を探しているというか。例えば原子とか分子とかいうのは、重力がかかってもバラバラになりませんよね。重力より強い力で結びつき合っている。そういう力が、身体のなかにあるというのも不思議で」

 「(日本人の)伝統的な身体が近代になって一度壊され、軍隊式になってしまった。いまはもう一度取り返さなきゃいけない時期ですよ。自分の内側からわいてくるような感覚を」

 陸上はトラック競技に較べて、フィールド競技は勝負がわかりにくく、テレビでも見づらい。表情のクローズアップはいいが、1人1人の選手の競技の全体性のようなものが、1回毎にあっという間に終わるために、実にとらえにくい。地味で見えにくい競技だ。広治選手の言葉に触発されて、こんどのアテネ五輪の投擲競技は、興味津々で見ることができそうだ。

 


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