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第88回日本陸上競技選手権大会
オリンピック 5000、10000m代表
福士加代子

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vol.203(2004年6月 9日発行)

【杉山 茂】「ナマ」にはならぬバレーボール中継
【岡崎満義】福士加代子選手のおもしろさ


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「ナマ」にはならぬバレーボール中継
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 高い視聴率をあげたバレーボール・アテネオリンピック最終予選(5月・東京)の日本戦が、ほとんどビデオテープ再生による番組だったことが、話題になっている。スポーツ中継がナマと限らないのはゴルフでもみられるし、ウィークデーの午後に行われたプロ野球を、夜の時間帯に録画で放送する手も、古くから使われている。  

 今回のバレーボールは、試合開始時間と放送時間が近く、しかも各局のニュース時間帯からずれていたことで、勝負の行方があらかじめ分かってしまうケースが少なかった。

 会場のファンが携帯電話で、テレビ観戦の友人、知人に結果を“速報”しても、さほど視聴率には響かなかったようだ。

 ナマ風な「録画番組」を受け手側がすっかり飲み込んでいる時代ともいえる。ゴルフ番組で「このショットが決まればプレーオフ!!」などとアナウンサーが興奮しても、発表されている放送時間の残りを“計算”すれば、決着は見通せ、お茶の間は苦笑まじりで、アナウンスを聞くのだ。

 もっとも、収録の時点では、プレーオフへもつれこむ状況には間違いなく、上ずった声ばかりを笑うことはできない。

 今回のバレーボールは、ゲストとも主役ともいえる人気グループのパフォーマンスが、番組に盛り込まれ、仕立てが巧みであった。

 バレーボールは、ゴルフ、テニスなどと並んでテレビ局泣かせのスポーツだ。

 進行が早く、短時間で終わってしまうかと思えば、もつれにもつれフィナーレが読めない。オリンピック本番のような特別枠でもなければ、録画構成で、となる。

 結果を読まれてしまう弱点はあるものの、肝心な場面で“お別れ”、よりはいいともなる。

 プライムタイムに「終了」が不安定なスポーツを、編成するのはリスクが大きい。野球(プロ)やボクシングも同じ“要素”があるが、こちらはナマで組む。

 野球は毎日のように中継されており、全試合を終了まで、とするのはムリだ。ボクシングは、同時進行のスリルが、より強く求められ、例え「1回」で終わっても仕方がない―こんなところが、送り手側の理屈である。

 総てのスポーツでナマ中継の理想が実現するとなれば、当然その内容、質は精選される。

 その厳しい視線に、国内では、どれだけのスポーツが、応えられるか。いささか心もとないのが実情ではないか。タレントの“助演”もなく、プライムタイムを占められるスポーツとなれば、さらに心細いのだ。今回も録画でやっと、だったのである。


福士加代子選手のおもしろさ
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 先日開かれた陸上日本選手権をテレビで見た。アテネ五輪代表選考会もかねているとあって、緊張感のみなぎるレースがくりひろげられ、大変おもしろかった。

 その中で、女子5000mと10000mの代表に決まった福士加代子選手(ワコール)のインタビューの受け答えに驚き、笑いを誘われた。

 10000mのあと、インタビュアーに「みごとな勝利でしたね」とマイクを向けられて、「よかったよかったよかったよかった、ハハハハ」と速射砲のように言葉を連発した。

 名前がどうしても思い出せないが、男性の漫才師にこれと同じ口調・テンポの喋くり漫才がある。

 5000mのあと、「これからの目標はなんですか」と訊かれて「今晩どれだけビールを飲むか、ということですかねェ」

 アナウンサーを手玉にとる、煙に巻く、という感じだが、いつも笑顔で、カラッと明るい声とテンポの早さで、嫌味がない。毒がない。たくさん汗をかいたあと、カンラカラカラすべてを笑い飛ばすようなお喋りができるのは、大変なタレントであり、見るものまで笑いの渦に巻き込んでしまえるのも、ひとつの人徳というものだろう。

 数年前、マラソンの渋井陽子選手にも福士選手と似た“お笑い系”のタレント性を感じたが、福士選手の方が一段と揮発度・乾燥度が高い。珍しいタイプのスポーツ選手だ。

 こういう相手は、インタビュアーにとってはなかなか手ごわい。スポーツは昔から、血と汗と涙という湿気の強いコメントが多い。スポーツのいい話は湿度が高いということになれているインタビュアーは、福士選手のようなドライな“お笑い系”のタレントには、相当てこずるだろう。インタビュアーのあらかじめつくった質問のストーリーを、一瞬のうちに突き崩す意外性をもっているからだ。そういう意味では、福士選手はテレビ向きで、この感じは活字ではなかなか出しにくいだろう。

 とぼける、というのではない。煙幕をはるというのでもない。普通は質問に対して考えて、ひと呼吸おいて慎重にゆっくり答える選手が大半である。

 福士選手の場合は、故意に相手の質問をはぐらかそうとしているのではなく、「いま・ここ」にいる私の体感しているものが、反射的に口をついて飛び出してくるような感じだ。本心、ホンネを隠そう、という防衛的なものではなくて、自然に素直に「いま・ここ」にいる自分の気持ちをストレートに表現しているように見える。だから嫌な感じを受けないのだろう。

 イチローがどんなボールにでもアジャストできる絶妙のバット・コントロールをもっている、というならば、福士選手はどんな質問でも思いがけない方向に弾き返してしまう天性のリップ・コントロールをもっている、といえようか。どちらも、本能、反射神経のおもむくままに、という意味のコントロール。

 こういうタイプのタレントに対しては、インタビュアーは質問の軸をブレないようにすることが肝要だ。中心軸がしっかりしていれば、乱反射的な答えもいっそう輝きを増すだろう。

 


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