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vol.206(2004年6月30日発行)

【杉山 茂】EBU、引き続きオリンピック放送権握る
【高田実彦】次の合併めぐるミステリー 巨人がダイエーを買収だって?!
【岡 邦行】やっぱり、またまた今年も“沖縄”だ
【岡崎満義】スポーツと日本的なるもの




筆者プロフィール

vol.205 2004年6月23日号「近鉄+オリックス 問題」
vol.204 2004年6月16日号「近鉄を潰したのは・・・」
vol.203 2004年6月 9日号「福士加代子の・・・」
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EBU、引き続きオリンピック放送権握る
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 2010年のバンクーバー冬季オリンピックと12年の夏季オリンピック(開催地は来年決定)のヨーロッパ向けテレビ放送権が、ヨーロッパ放送連合(EBU)の手に落ち着いた。

 国際オリンピック委員会(IOC)が、6月18日、明らかにしたもので、波乱含みの展開か、と見られていた交渉は、表面的には静かな決着、となった。

 IOCは、これまでヨーロッパ向けの放送権は前会長ファン・アントニオ・サマランチ氏(スペイン)自らが、EBUを中心に交渉を進めていた。

 90年代以降、EBU以外の放送機関やエージェントが参入を望んだが、IOCとサマランチ氏は、「EBUありき」で押し切って来たものだ。

 “自動的”とも言えるこの展開を、ヨーロッパ連合(EU)が、改善を求め、今回は史上初ともいえる“入札”による形式を導入した。(当コラム、3月24日193号参照)。

 放送権料の競争となれば、各国の公共放送によるEBUの不利はまぬがれない。なりゆきが注目されていたが、IOCは、本格的なテレビ中継の始まったローマ大会(1960年)以来のパートナーを、引きつづいて選んだものだ。

 「EBUによってオリンピックの無料放送が保証される」というのが、最大の理由である。

 放送権料は2大会合わせて8億4000万ドルを超えているという情報が流れている。

 この数字を2006年冬季(トリノ)と08年夏季(北京)2大会に比べてみると2億6200万ドル増、1.45倍となる。

 すでに合意ずみのアメリカ(NBC)は、5億ドル弱の増、1.33倍だ。倍率はEBUが上回る。

 金額では、ペイテレビなどが「EBUよりはるかに多額」で、放送時間量も「EBUを圧倒的にしのいだ」と言われ、それでも敗れた関係者たちは、憮然たる表情を浮かべたとされる。

 EBU側は、もちろん「視聴者の利益を判断した決定」と拍手を送る。

 EBUも、かつてはアメリカの合意額10%程度で済んでいた割合が、シドニー以降は40%台に上がり、今回ものその水準にある。しだいに楽ではなくなってくる。

 今秋から始まるとされるNHK・民放合同によるジャパンコンソーシアム(JC)の交渉にも、今回の決定は影響を及ぼす。2006年冬季と08年夏季のJC放送権料(2億1850万ドル)は、アメリカ(NBC)の14.5%、EBUの37.8%。

 この数字を根拠にすると、JCの次の2大会総額は2億9000万ドルから3億1700万ドルのラインということになる。

 「2億5000万ドルまで」と言う皮算用は空しそうだ。「3億ドルの攻防戦」へ引きずり込まれる色がさら濃くなりそうに思える―。

次の合併めぐるミステリー 巨人がダイエーを買収だって?!
高田 実彦/スポーツジャーナリスト)

 あと1球団減って1リーグへまっしぐらのプロ野球界の水面下では、ヒソヒソと「次の合併球団」が囁かれている。ホントかどうかは誰にもわからない「次はここだ」の縁談を。

 まず、ダイエーとロッテ。

 近鉄とオリックスの合併話が出たとき、ほぼ同時にいわれたのには、それなりのワケがある。ダイエーの経済状況が悪いのはいうまでもないが、ロッテには、韓国に近いところに球団を持ちたいというのが以前からの念願。福岡ドームに飛行機で東京よりも近い韓国からお客さんを呼べるのだ。幸いロッテには韓国の国民的選手の李がいるし、ダイエーは強い。言うことなしである。

 横浜とロッテ。

 これは“京浜ライン”だ。いま横浜と千葉は一本のJRでつながっている。もともとロッテの本拠地は川崎だったし、横浜は昔からなじみが深いのだ。経済的にも横浜は苦しい。いい縁組だ。

 ヤクルトと横浜。

 これは“マスコミ・ライン”だ。横浜のオーナーはTBS、ヤクルトにはフジ系のニッポン放送の資本がはいっているが、つい先ごろまでニッポン放送も資本を入れていた。いわば親せき関係。読売と日本テレビに対抗するためにTBSとフジが手を結べば強力である。

 西武と日本ハム。

 日本ハムが北海道へ移るとき猛反対したのが西武だった。北海道には西武グループのホテルやゴルフ場がゴロゴロある。その北海道の本格的支配を狙って、ライオンズの準フランチャイズにしていたからだ。日本ハムにだって悪い話ではない。メリットは十分にある。

 西武と横浜。

 日本ハムが二の三のいうのなら、西武は横浜と組むだろうという。だいたい横浜球場は西武が造ったもので、堤オーナーはライオンズを買うとき、「横浜も経営したい」といって物議を醸したことがある。西武のプリンスホテルにとって横浜は東京に次ぐマーケットだが“支配圏”としていまひとつ。球団を持てば一気に横浜界隈乗っ取りの足がかりにできる。横浜の経営者TBSは、実は経営したくなかったのに経営せざるを得なくなった経緯があるだけに、これも考えられる縁談である。

 最後に奇想天外だが、「巨人がどこかを買う」夏のミステリー説。

 巨人は、1リーグにして人気と収益を上げたいのだが、勝てなくては元も子もない。そこで持ち前の金権主義を発揮して、「どこかのチームを丸ごと買う」というのだ。そうしなければ1リーグにならないのなら「やるしかないだろう」と、強権な渡辺オーナーなら考える、というのが球界情報通の分析だ。

 そこで、その問題の相手が、アッと驚くダイエーだと!!

 「去年ダイエーが小久保を無償で巨人に出したのは、その伏線。話は進んでいると思うよ」と、この怪説を口にする人は力説する。

 さてどうなるのか。七夕の7月7日のオーナー会議で、最初の何かが起きる。

やっぱり、またまた今年も“沖縄”だ
岡 邦行/ルポライター)

 先日行われた日本女子ゴルフアマチュア選手権大会で沖縄県の14歳の中学生、宮里美香が優勝を飾った。昨年は宮里藍、一昨年は上原彩子が優勝している。宮里藍も上原彩子も沖縄県出身。ともに10代で栄冠を手にしている。今回、宮里美香と優勝を競った諸見里しのぶも17歳の沖縄生まれだ。

 何故に沖縄の子は強いのか?

 知人であるプロゴルファーの蒋野(こもの)利昭さんが解説してくれた。

 「岡さん、沖縄のゴルフは、本土のように英国から伝えられた上流社会のスポーツではありません。沖縄にゴルフ場ができたのは戦後になってからです。駐留米軍がアワセ・メドウズ・カントリークラブを造ったのが始まり。つまり、アメリカナイズされた誰もが楽しめるスポーツとして、沖縄の人がゴルフを気軽にできる環境が生まれたんです。岡さんも何度も沖縄に足を運んでいるし、アワセも見ていますから、気軽にできる沖縄のゴルフ事情を知っているでしょう……」

 蒋野さんは、沖縄ゴルフの底辺拡大のためジュニア育成に積極的に取り組んできた文部科学大臣認定のゴルフ教師。沖縄ゴルフ協会のジュニア育成委員長でもある。現在の蒋野さんは、沖縄県内のジュニア育成のため、レッスン会を開く一方、小学校から高校までの教師に指導者としての講習会を開いている。
 
 蒋野さんがつづける。

 「岡さんも知っているように沖縄の那覇市の郊外にある南山カントリークラブは、沖縄のジュニアたちの“聖地”といわれています。13年前からジュニア育成のため地道な活動をしてくれています。毎年夏には小学生低学年の部、高学年の部、中学生の部、高校生の部の4クラスに分けて『沖縄ジュニア選手権』を2日間に亘って開催している。毎年、120人を超すジュニアが出場し、これまでの優勝者には、“宮里3兄妹”の聖志、優作、藍を筆頭に上原彩子、諸見里しのぶ、宮里美香が名を連ねています……」
 
 まさに「なるほどなあ」だ。
 
 それにしても女子ゴルフ界は、沖縄勢の活躍に限らず、完全にジュニア勢に乗っ取られた感じだ。今回の日本女子アマの決勝ラウンドであるトーナメント方式の36ホールのマッチプレーには、予選ラウンド36ホールの上位32人が出場したが、そのうち20人が10代の選手であり、30代以上の選手は1人のみ。残る11人は20代だった……。
 
 日本ゴルフ協会の女子ナショナルチーム育成委員を務める阪本知子さんは、私に溜息まじりにいっていた。阪本さんは、3年前の日本女子アマに出場。予選を3位で通過したものの決勝ラウンド1回戦で敗退している。

 「私の1回戦の対戦相手の子、なんと2年生だった。スタート前にその子にお父さんとお母さんの年齢を尋ねたんですよ。そしたら私よりもはるかに若かった……。この時点で負けですよね。6月は暑いし、若い子は体力もあるし……。いやあ、参りました」
 
 ちなみに阪本さんは、かつては日本を代表するアスリート。陸上7種競技の第一人者として活躍し、日本選手権6連覇の記録を持っている“鉄女”であった。

スポーツと日本的なるもの
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 アテネで金メダルの有力候補、日本のシンクロナイズド・スイミングだが、デュエットの立花美哉・武田美保組の演技は、ここにきてかなりの修正がなされたようだ。

 これまではより日本的な美、これぞ日本、というものを追及しようと、歌舞伎をテーマにして演技を構成してきた。和太鼓や三味線はもとより、大きく見えを切る動作なども取り入れて、歌舞伎そのものを前面に押し出した。これでニッポン・アピールは万全、とのぞんだ五輪予選で、ロシアに完敗、よもやの2位に終わった。採点競技の難しさでもある。

 井村ヘッドコーチは「民族性を出しすぎた」と、日本的な美が思ったほど理解してもらえなかったことを反省する。

 そして歌舞伎十八番の勧進帳のベースは残しながら、エレキギターの音もとり入れ、日本人形のようなかわいらしい動きを加えた、という。日本的な歌舞伎へのこだわりを薄めて、コミカルな明るさや楽しさを中心にすえたようだ。

 日本人ほど日本人論が好きな国民はない、といわれる。日本人とは何か、日本的とは何かを、みんな問いつづける。スポーツの世界でも、末続選手がナンバ走りを取り入れたとか、桑田選手が古武術を応用しているとか、日本的なものへ目が向く流れも出てきた。

 スポーツがボーダレスになり、ユニバーサルなものになればなるほど、ローカルなもの、民族性というものが求められるという側面もあるようだ。

 何が日本的なものなのかは、なかなか難しい問題だ。異文化交流の難しさだ。ローカルな、ナショナルな価値を、グローバルな規模で理解されたいというのだから、これは難しい。

 少し前、井村コーチと立花・武田組が、日本を一番よくあらわすものを教えてほしい、と京都の大きな呉服屋へ行って、歌舞伎の舞台でも使われる華やかな着物をあれこれ選び、それをヒントにコスチュームを作ったり、一連の日本探求ぶりをテレビで見た。

 そのとき私は、日本的というのなら、歌舞伎よりもむしろ、タカラヅカの男装の麗人を研究する方がいいのではないか、と思ったものだ。

 何が日本的なものかは、本当に難しい。自分探しが往々にして迷路に入り込んでしまうように、日本的なるもの探しも容易ではない。

 スポーツで言えば、1964年の東京オリンピックの頃は、日本的なものははっきり目に見えた。“東洋の魔女”日紡の女子バレーボールであり、東京五輪でマラソン3位になった円谷幸吉選手が、メキシコ五輪の年に哀切な遺書を残して自死した事件などである。

 日本的なるものは何かと、キョロキョロ探すことはなく、一途に生きることで十分日本的であった。大松博文監督と河西選手以下の魔女たちは、回転レシーブという、まさに日本的な技術を作り上げ、やがてそれはユニバーサルなものとなって広まっていった。最後の家族、あるいは擬似家族制度の輝きが残っていた。

 あれから40年経って、今は日本的なものを必死に探さなくてはならない時代になった。勝つために、そして日本人選手としてのアイデンティティを確かめるために、新しい努力が求められることになったのだ。

 家ではなく、個の自立が叫ばれる今、日本的なものを探求する傾向は強まってくる。自と他、私と公、個と集団、ナショナルなものとユニバーサルなもの……そういう問いの前に、誰もが立つことになった。

 スポーツ選手も例外ではない。シンクロナイズドの立花・武田組の動きは、そのことを如実に物語っている。

 


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