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【杉山 茂】「プロ化」で揺れる男子バスケットボール
【岡崎満義】柔道・塘内選手の負け方を見て


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「プロ化」で揺れる男子バスケットボール
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 日本バスケットボールリーグ機構(JBL)が揺れている。

 JBLは95年、それまで“実業団”によって構成してきた「日本リーグ」(男子)を改組し、さらに「スーパーリーグ」を発足させ、2部が「日本リーグ」を名乗って、ここまで来た。

 このうち「スーパー」に所属する新潟アルビレックスと「日本リーグ」のさいたまブロンコスが、今シーズン終了(来年3月)まででそのあとJBLを脱退し、新たに「プロ・リーグ」を設立すると発表(8月9日)したのだ。

 唐突に見える行動だが、両チームは、廃部などで活動を休止、縮小した“実業団”をクラブとして再建、当初から“プロ志向”が強かった。

 新潟は、Jリーグのアルビレックスと“同門”、さいたまブロンコスは、地域密着型のクラブ。企業に頼らず自立した運営を目指し、マーケット路線を求めている。

 「スーパーリーグ」は「プロ・リーグ」を将来目標に据えた一過程として動き出したものだ。「Jリーグ」に刺激されて、90年代前半、いくつかの球技は「プロ・リーグ」を検討、男子バスケットボールは、そのなかで最も意欲的、積極的であった。

 ところが「スーパーリーグ」を設けて1年が経ち、さてこれからという時に、プロへの推進役として先頭を走っていたいすゞ自動車が休部、02年からの同リーグ出場を断念してしまった。

 これで「プロ・リーグ」へのステップは明らかに鈍くなったのだが、新潟、さいたまにしてみれば、チーム(クラブ)存続とリーグの発展は、運営のビジネス化があってこそはじめて成立する。

 いすゞ自動車の熱意以上に、JBL内のプロへのムードを高めにかかっていたが、事業化を否定しないまでも、実業団カラーを受け継ぐ各チームには、試合数の増加などに尚早論、慎重論が多く、足踏み状態だった。
新潟、さいたまの脱退願いは、こうした状況に“しびれ”を切らせたものといえる。

 JBLは、8月19日の臨時理事会(東京)で両チームの届出は、廃部、解体などと規定した脱退の理由には当てはまらないとして、認めないことを決めた。今のところ、両チームの次の動きは明らかにされていないが、円滑に元のサヤに納まるものだろうか。

 「プロ・リーグ」へ賛同するチームが増え、勢いが加速したとしても、その活動を日本バスケットボール協会(JABBA)が認めるかどうか、との新たな問題も予想される。

 JABBAは、06年夏、埼玉県を中心会場に世界バスケットボール選手権(男子)の開催を控えている。ホストとして、日本代表チームの活躍は大会成功のカギであり、頂点強化は最大課題だ。

 国内トップゾーンが乱れていては、とうてい活況を望めない。「プロ」を考えるタイミングでもある。

 互いのバスケットボール愛を、この素敵なスポーツの新しいエネルギーとするような展開を期待したいのだがー。

柔道・塘内選手の負け方を見て
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 スポーツは勝敗を競う、まことに人間的な行為だ。相対するどちらが勝つか負けるか、見るものは手に汗握って没入する。多分、当事者は勝つことがすべて、負けたら何の意味もない、と思うぐらいのギリギリの気持ちで戦っていることだろう。

 ところで、見る者にとっては、敗者の中にも意味を見つけるということが、しばしばある。もちろん、応援する選手が勝つことに最大の喜びがあるのは事実だが、たとえその選手が敗れても、なおそこに深い意味を見出すことがある。そこにスポーツの不思議さ、奥深さがあるのだ。美しい勝ち方と同様、素晴らしい負け方、というものがある、と言っていいだろう。

 むしろ、スポーツを見る側、フツーの生活者にとっては、敗者への共感の方が強いかもしれない。なぜなら、人生は連戦連勝とはいかないからだ。俗に、七転び八起き、といわれたり、負けるが勝ち、失敗は成功のもと、といわれたりすることからも、人生における負けをどうとらえ、意味づけていくか、きわめて大切なことになっているように思われる。

 勝ちから学ぶことと同じ位、いやそれよりも、負けから学ぶことの方が多いかもしれない。少なくとも、フツーの生活者にとっては。

 今は亡い作家・色川武大さんの持論は、人生8勝7敗でいくのが一番、というものだった。全勝などということには、味わいも何もあったものではない、ということだろう。といって、全敗は論外だ。たった一つの勝ち越し、というところに深い意味がある。

 8勝7敗で思い出すのは、小兵の名横綱・栃錦が前頭上位にいた頃、初日から7連敗したあと、千秋楽まで8連勝したことだ。8勝7敗を、勝ったり負けたりでいいや、といういささかゆるんだ精神のあらわれではなく、7連敗後8連勝というおそるべききびしさの「8勝7敗」がありうることを、栃錦は教えてくれた。

 何度でもいうが、負けの中にも意味がある。スポーツを見る生活者にとっては、選手の負けからも感じるものは多くある。

 アテネ五輪をテレビで見ながら、たくさんの勝者、敗者を見た。優勝まちがいない、と太鼓判を押されていた柔道100キロ級の井上康生選手も、あえなく敗れた。それは残念無念なことだった。辛い王者!それより初出場の塘内将彦選手の負け方は、なんとも不甲斐ないものに見えた。歯がゆいばかりの負け方だった。

 どうしたのだ!?高松正裕選手のように、アテネ入りして体調を崩した、とは伝えられていなかった。試合後、このままでは終われない、次の北京で、と悔しさをバネにして、次の決意を語っていた。その言やよし、と思う。

 しかし、負け方にもみごとな負け方というものもある(たとえば泉浩選手のような負け方は、見ていてもスカッとふっきれたものを感じる)、ということを心に刻んでほしい、と思う。

 一発勝負のトーナメントはむずかしい。それでも、実力の片鱗も見せることなく、ただズルズルと負けてしまっては、見る者はそこから何も得ることはできない。見ている人間は、負けの中からも、何かの意味を見つけようとするものなのだ。そのことを、塘内選手にも知って欲しいと切に思う。

 


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