パラリンピックは早くも中盤。オリンピック同様、車いすバスケットボールやシッティングバレーといったチーム競技が苦戦している一方、すでに競技を終えた柔道では金メダル1つ、銀メダル2つ、銅メダル1つ。水泳でも前回シドニー大会で6つの金メダルを取った成田真由美が現時点で金メダル3つ(9月23日現在)を獲得するなど、オリンピックと同じように、柔道・水泳といった種目での活躍が目をひいている。
そして、オリンピックでは「おやじの星」山本選手の銀メダル獲得で一躍脚光をあびたアーチェリーが、パラリンピックでもやってくれそうだ。 22日に行われたアーチェリー女子個人車いすでは、平沢奈古と磯崎直美の2名が、準決勝へとコマを進めた。
アーチェリーは健常者と同じ条件で戦う競技のひとつ。車いすと立位(もしくは椅子に座る)の2種類の戦い方でそれぞれ競うにしても、下肢だけではなく上肢に障害があっても、的までの距離は70m、的の大きさもすべて健常者と同じ状況で競技を行う。
トーナメントの組み合わせを決めるために、前日の21日にランキングラウンドというのが行われたのだが、そこで平沢が世界記録を更新した。
最高点の10点満点を72回射れば720点が最高得点になる72射で、もともとあった世界記録はイタリアの選手がシドニー大会で出した593点。しかし平沢は、アーチェリー大国・韓国の選手の601点すらも上回り、トータル613点と世界記録を大幅に塗り替えた。
平沢は、1回戦後の勝利でも「まだ緊張しています」とコメント。しかし「アテネに入って調子がよくない」と言いながら、世界記録を更新したその本番での強さはトーナメントでも発揮され、12射で競う2回戦、最後86対85の1点リードで迎えた最終1射で、先に相手が10点満点を命中させ、平沢も10点を命中させないと負けが決まってしまうというその最後の一射、彼女はきっちり的のど真ん中、10点を命中させ、準決勝へと勝ち進んだ。 準決勝までは、決められた時間内に自分のペースで決められた本数の矢を射るが、決勝の「オリンピックラウンド」は、お互い1射ずつ交互に射る。ゴルフで言うマッチプレーだ。
相手の得点がプレッシャーになったり、逆に「よしっ」と思って力みにつながったりと、微妙な感情が結果に大きく影響するわけで、今までの戦いよりもさらに「精神力」の勝負になる。 彼女が今回出した世界記録は、あくまでも障害者スポーツ競技の枠の中のことだが、「精神力」には障害者も健常者もない。ぜひ彼女のしたたかな強さで、いずれは健常者と同じフィールドで戦うのを見てみたい。 しかし、まずはその前にパラリンピック・アーチェリー個人女子の決勝は25日。メダル獲得なるか。注目したい。
(アテネ発) |