テレビや新聞が伝える報道の言葉じりをとらえるのは気がひけるが、セ・パ両リーグスト決行の日(9月18、19日)、各地で行われた選手たちの“催し”に、多くのファンが詰め掛け、声援を送ったことで「改めてその力を知った」という発言を見聞して、驚いた。 ファンは、プロ野球が誕生して以来、2代、3代にわたって、いつでも、どこでも声援を送りつづけている。 今回の騒動で突然「力」になりはじめたのではないのだ。スト支持も声援のホンの一環である。 選手たちの一生懸命さを知らないわけではないが、つねに「ファン第一」のスピリッツで、日本のプロ・ベースボールは過ごしてきた、と自信をもって言い切れるだろうか。 スピーディーな進行が望まれつづけながら、いたずらに時間のかかる試合が減らず、少年たちのサインの求めには素通りし、試合後のインタビューの多くは決まり文句(聞き手の力不足も否めないが・・・)。夢を売るサービスの自覚があるのか、疑わしいものだった。
経営側の責任もまた大きい。プロらしい攻守でファンを魅きつけているのかと、どこまで目を光らせていただろう。スタディアムに魅力のある食べ物が並び、ファミリーで出かける楽しみに工夫がこらされているわけでもない。 ストライキによって、改めて多くのベースボール好きの存在に気づいているようでは、少々の変革を遂げたところで、いずれはまた、行き詰まり、ほかのエンターテイメントに追い抜かれることになる。 この際、セ・パ両リーグは経営側も、選手側も総てを見直す姿勢で“再出発”の気構えを示すべきだ。 ついでに言えば、いわゆるアマチュアとの一貫した構造も考えたらいい。オリンピックへ臨む体制も、ベースボール界全体のテーマとして対応しなければ、ダグアウトの日の丸にどのような呪文(じゅもん)を仕込んだところで、それだけの話に終わる。 ペナントレースが再開したその日(9月20日)、セ・リーグ1、2位が対戦したテレビ中継は、待ちかねた茶の間の注目を久々に集めるかと思えたが10パーセント台に届かなかった。(=関東地区、ビデオリサーチによる)、テレビ関係者はこうつぶやいたものだ。 「ストの日のあの盛り上がりは何だったのだろう?」ー。 |